かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

エッセイ

文房清玩(13) 机 Ⅴ

机の高さや「ぐらつき」、傷といった諸々の検分が終わったら、最後は忘れずに椅子の善し悪しを測らなくてはならない。 もちろん、最初からガタついている椅子は論外であるが、学校の椅子の塩梅ほどムズカシイものはないと私は常々思っている。 まず、膝裏に…

文房清玩(12) 机 Ⅳ

三、学校の机 四月は忙しい。なぜなら新しい教室の机をよくよく吟味しなければならぬからである。 新しいクラスの新しい座席に着いた瞬間から、クラスメートの顔ぶれより先に気になるのは、机の塩梅である。身長も低く座高も低い人間にとって、先ず以て一発…

育児漫遊録(40) 寝返った男 Ⅲ

両足の蹴っ張りが推進力となることを、もしかするとこの男は理解しているのだろうか。 トムとジェリーであれば、こんな風に両足が空回りしていてもピューンと矢のように進んでいくのに、我が子の前進はいまだ仮想の域をでないようである。 畳でこれをやると…

育児漫遊録(39) 寝返った男 Ⅱ

さて、寝返ったはよいものの周りを見渡す以外に、この男、別段何をする様子でもない。ただ時折、突っ張っていた両手を離して腹でバランスを取ろうとする様子が見られる。その拍子で両手同様、両足もまた宙に浮いてバタつく姿は、虚空を泳ぐようでもあり、も…

育児漫遊録(38) 寝返った男 Ⅰ

畳の上へ転がしておいたはずなのに、いつの間にか腹ばいになって、ニヤニヤ得意そうにこちらを見ている。両手を突いてぐんと頭を伸び上がらせる様子はまるで、どこかの展望台にはじめて上がった人の風情である。 この男、ついと昨日までこんな芸当は出来なか…

文房清玩(11) 机 Ⅲ

そんな不遇の机に転機が訪れたのは、それこそ大学を出てからであった。あの地震で以てやられた家を建て替えて、新しい部屋を拵えるとなったときに、わが学習机にようやく白羽の矢が立ったのである。 折角の新しい部屋であるから、私は是非とも垢抜けのしたデ…

文房清玩(10) 机 Ⅱ

二、学習机 katatumurinoblog.hatenablog.com 幼稚園を卒園する間際、離れて暮らす父方の祖母と一緒に家具屋で選んだことを覚えている。ランドセルと諸々の小道具はこちらで選んだから、机はそちらで・・・という了解が成立していたのやも知れない。ともかくも…

文房清玩(9) 机 Ⅰ

物心のつく前から、これに向かうように仕向けられてきたような気がしないでもない。筆記用具を持ったならば、必ずそこになければならないもの、それが机である。 茶の間のテーブル、勉強机、学校の机、講義室の机、そして私の愛用する文机・・・思えば自分は様…

些事放談 『ありき』の世界 Ⅲ

原発処理水の海洋放出、鳴り止まぬメイワク電話、風評被害、食の安全性・・・これらの問題群にわれわれは如何に向き合ってゆくべきなのだろうか。 これからの青写真を描いていくにあたって、まずは『ありき』の思想からの脱却が図られなければならない。決定し…

些事放談 『ありき』の世界 Ⅱ

ちょっと中国側になった気持ちで考えてみる。ちょっとした貿易相手国で、今は経済的技術的にも求心力を喪いつつある日本という国が、「海洋放出やります。その安全性を説明しに来ました。」と言ってきたら、やっぱり「ハ? ふざけんなし。馬鹿じゃねぇの? …

些事放談 『ありき』の世界 Ⅰ

原発処理水の海洋放出がはじまったようだ。それに伴ってお隣の中国から福島をはじめとする近県に、オカシナ電話がかかってくるそうで、毎朝のニュースはその心ない所業をこぞって取りあげている。 確かにそれは「心ない所業」であって、日本の一個人のもとへ…

盆人漫録(39) え? 切るの?

自分が持ち込んだ教材を各人それぞれ作業することもあれば、誰かが持ってきた樹を合議にかけてやいのやいのと手を掛けることもある。時には害虫の話が各人の野菜作り相談会と化すなんてこともしばしばですが、それもまた貴重な情報交換。わが古川盆栽同好会…

育児漫遊録(37) 頸は燃えているか? Ⅲ

六ヶ月を迎えた我が子の頸は、あの頃のぐちゅぐちゅの真っ赤っかがウソであったかのようにキレイになった。 もちろん、お医者さんをはじめとする医院のみなさんのセカンド、サードの助言と、自分で言うのもなんであるが我々夫婦が一日二回せっせと洗って、保…

育児漫遊録(36) 頸は燃えているか? Ⅱ

我が子の頸は燃えている。 このままでは頸がぐちゅぐちゅの赤ん坊になってしまう。ただならぬ危機感に苛まれつつ、私と妻は頸の炎症が進む根本的な要因を話し合った。 第一に彼の頸は例のむちむちに閉ざされていて、洗いにくいこと甚だしい。ベビーバスの中…

育児漫遊録(35) 頸は燃えているか? Ⅰ

生まれてこの方、鉗子で引っ張られた痕こそ痛々しかったけれど、あっちこっちがむっちりむちむちで、これぞ健康優良児と思い込んでいた親馬鹿は電撃的に打ち砕かれたのであった。 「頸の方がちょっとアレかなぁ。」 まだ頸もすわらない時分であったか、我が…

盆栽と暮らす(13) ちょっと見ぬ間に

厳寒期と盛夏は、とてもじゃないけれど盆栽鋏を持つ手も鈍ります。 このところは日に三度の水やりも、その都度大汗をかく始末ですから、一鉢ごとに目をやって手を掛けるなんて余裕もありません。 小さい鉢は十把一絡げにして庭木の下へ避難させ、酷烈な直射…

蝸牛随筆(47) 暮れのこる雲に Ⅲ

もとは田の道である。 街区はそんなかつての畦に沿うて路をいくたりと走らせ走らせ、あらゆるところに滞りと湾曲を用意した。 古い街区、新たに拵えた街区。そのいづれもがただでさへ真っ直ぐでない路々を塞ぐように突出して、あらゆる箇所にどこかどん詰ま…

蝸牛随筆(46) 暮のこる雲に Ⅱ

katatumurinoblog.hatenablog.com 窓の外は次第に暮色を帯びてくる。 暮れ残った光は入道雲をしたたるような朱に染めながら、奥羽の山々の稜線に没しようとしている。その山際のえもいわれぬ輝きは、所詮私の筆では言い尽くすことができない。 遙かな穂波と…

蝸牛随筆(45) 暮れのこる雲に Ⅰ

暮れのこる雲のさそうようで、遠回りして帰ることにした。 何ということはない。おわりかけた日曜に用事を思い出して隣町まで出かけて帰ってきた、ただそれだけの話である。 時間を優先するのであれば、来たとおりに真っ直ぐな国道を帰ればよい。稲の穂はす…

育児漫遊録(34) ミルトンよさらば Ⅲ

おかげさまで、先日我が子はついにミルトンを卒業した。つまり離乳食が開始されたのである。 物の本によると哺乳瓶等の消毒は、離乳食の開始時期ごろまでと説かれており、ということはそろそろ何だかんだと免疫が付いてくるのが、このくらいの時期なのだろう…

育児漫遊録(33) ミルトンよさらば Ⅱ

「コスパ」ばかりではない。最近は「タイパ」などと略して費用対効果ならぬ時間対効果もまた消費行動ならびに、日常生活の様々な価値基準に組み込まれることがあるらしい。 ならばこの「ミルトン」は、日に一度ならず大鍋に湯をぐらぐらと湧かす必要がない分…

育児漫遊録(32) ミルトンよさらば Ⅰ

大鍋にぐらぐら湯を沸かして、毎晩のように父や母が弟の使った哺乳瓶を煮ていたのを覚えている。 煮沸の時代からいつの間にか、世は「ミルトン」の時代になったらしい。会う親戚ごとに「哺乳瓶を毎晩」というお話しを伺ったわけであるが、ミルトンの有り難さ…

蝸牛随筆(44) 盆支度 Ⅲ

かつて上方出身の友人に「下から伝い登って仏壇へ入るご先祖様の諸生霊」の話をしたところ、目を丸くして驚いていたのを覚えている。その友人曰く「実におどろおどろしい感じであるし、土着的な信仰の匂いがある。」とのこと。 「そもそも霊体が地を這ってい…

蝸牛随筆(43) 盆支度 Ⅱ

盆棚を吊りながらあれこれ片付けていると、仏壇の抽斗から線香の在庫が大量に出てくる。 線香を発見しかねた祖母が母に、無いから買ってきてくれろと頼んだのだろうが、母は母の所定の位置にしまうものであるから再び発見が遅れ・・・の無限ループが発生したの…

蝸牛随筆(42) 盆支度 Ⅰ

ヘンなゴザを買ってきて、それを仏壇から垂らしてみたり、ナマのソーメンを買ってきて野菜と一緒に吊り下げたり。 子供の時分は盆というものがとくと不思議な行事だと思っていた。今もなお不可解な点はなきにしもあらずなのであるが、クルクルと旋回する盆提…

盆栽と暮らす(12) 暑中お見舞い申し上げます

炎天燃えるような烈暑のなか、棚の盆樹たちは逞しく生を謳歌してその緑を漲らせています。 「なんともはや、見習いたいものだなぁ」と思うひ弱な人間はサッシの内、高校野球を聞きながら冷房の効いた安全圏にわだかまって情け無い感慨を述べているわけであり…

盆栽と暮らす(11) 嗚呼、良かった。

芽切りの写真を撮っておけばよかった。と毎年のことのように後悔する私は、新芽を切られてもまた不屈の営みによって二番芽を吹かせる松の樹に比べても、一向に成長していないということなのやも知れません。 あんなに切ったにも拘わらず、棚場の松の枝先に鮮…

育児漫遊録(31) 注射の心得 Ⅴ

ついとこの間打ったばかり、なんて思っているとまた直ぐに一月後の予防接種が迫っている。目を真っ赤に充血させて世話している時には、延々と飴のように続くかに思われた時間が、殊注射となると昨日の今日みたいにやってくる。時間とは何と行き当たりばった…

育児漫遊録(30) 注射の心得 Ⅳ

「おっ、一気呑みかな?」 お医者さん監修のもとで、我が子は『ビフ』の経口投与ワクチンを脇目も振らずに一気呑みしている。珍しい味なのだろう。生まれてこの方二月あまり、乳より他のものを味わったことがないのだから無理もなかろう。 まぁ、経口ワクチ…

塾生心得「八月のおたより」

「いつまでも あると思うな 夏休み」と早速、笑点の答えみたいなのを一発。その心はズバリ、お盆を過ぎると夏休みは倍速になるので気を付けましょう、という一つの真理をそこの夏休みボーイとガールにアドバイスしておきたかったのであります。 夏休み真っ盛…