かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

テクストを読む

蝸牛独読(12)「西の魔女が死んだ」を読む#4

三、立ち現れる〈死〉 言葉によって自分の周りの世界及びそこに存在する事象や他者を対象化してゆく営みとは、他ならぬまい自身の整理しきれない感情にもまた等し並みに作用していくものと思われます。 その「感受性」の強さも手伝ってか、ママの言う「扱い…

蝸牛独読(11)「西の魔女が死んだ」を読む#3

katatumurinoblog.hatenablog.com二、言葉で世界を切り分ける 前回は、まいという人物が極めて冷静に自分の周りの世界を見つめ、自らの「苦痛」より他にない現状をよく把握するまなざしを持ち得ているというところまで話を進めて来ました。 今回は彼女と言葉…

蝸牛独読(10)「西の魔女が死んだ」を読む#2

katatumurinoblog.hatenablog.com一、まいのまなざし 成長を論じるためには、成長以前の段階から分析を進めていく必要があるでしょう。 まいは、中学一年生の五月から学校に行くことが「苦痛」になりはじめます。クラス内の女子グループの中に入って上手く立…

蝸牛独読(9)「西の魔女が死んだ」を読む#1

塾生の読書感想文に付き合って、恥ずかしながらこの年になってようやく読む機会に与ったのが、この梨木香歩『西の魔女が死んだ』であります。 生きている人の小説を数えるほどしか読まない私にとって、その存在はもちろん書店や人々の口から聞いて知っていま…

絵本の時間(1) 『おべんとうバス』

お題「大好きな絵本は何ですか?」 子供のために絵本を買ったのは、これがはじめて。自分で読んだり、コレクションのために集めることはあっても、誰かのために絵本を買うというのは、今までやったことがあるようでやったことのない新鮮な経験でありました。…

蝸牛独読(6)「くまさぶろう」を読む#3

二、孤独なるストレンジャー くまさぶろうの「どろぼう」スキルは、前回確認した通り、どうにも人間離れしたところがあります。 前半部では物を盗み取ることに長けたスキルが、後半部では何と「ひとのこころ」を盗み取るまでに成長(?)しているのです。 それ…

蝸牛独読(5)「くまさぶろう」を読む#2

一、skillful robber テクストは冒頭から第一の謎を投げかけて来ます。「どろぼうのめいじん」と紹介されるくまさぶろうでありますが、何と彼は「はじめのころ」「それほど じょうずなどろぼうでは」なかったというのです。 まず「はじめのころ」とは、いつ…

蝸牛独読(4)「くまさぶろう」を読む#1

みなさんは『くまさぶろう』という絵本をご存知でしょうか? 名前のインパクトもさることながら、お話もくまさぶろうのビジュアルも、一度読んだら忘れられない一冊となることは間違いないでしょう。 では「くまさぶろう」とは一体、何者なのか? くまさぶろ…

蝸牛独読(3) ひなたと英語

今こそ朝ドラ「カムカムエブリバディ」を読む。英語をテーマにテクストの分析を進めていきます。

蝸牛独読(2) 傷と癒しをめぐって

NHKの朝ドラ「カムカムエブリバディ」を〈読む〉試みの、第二弾としてお送り致します。 二、るいと英語 この物語の中で最も陰影深く語り出されるのが、安子と稔の娘「るい」でしょう。父親の顔を知らない彼女は幼少期に母安子と決別し、長じて間もなく父方の…

蝸牛独読(1)「カムカムエブリバディ」

〈読む〉こととは、ひとつのテクストを分析し、解釈を生産する試みです。それはテクストに使用された言葉を用いて、新たな意味を生成するクリエイティブな作業である反面、ともすれば恣意的な独りよがりに陥りかねない危険性も孕んでいます。頼るべきは、自…