かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

子育て

育児漫遊録(37) 頸は燃えているか? Ⅲ

六ヶ月を迎えた我が子の頸は、あの頃のぐちゅぐちゅの真っ赤っかがウソであったかのようにキレイになった。 もちろん、お医者さんをはじめとする医院のみなさんのセカンド、サードの助言と、自分で言うのもなんであるが我々夫婦が一日二回せっせと洗って、保…

育児漫遊録(36) 頸は燃えているか? Ⅱ

我が子の頸は燃えている。 このままでは頸がぐちゅぐちゅの赤ん坊になってしまう。ただならぬ危機感に苛まれつつ、私と妻は頸の炎症が進む根本的な要因を話し合った。 第一に彼の頸は例のむちむちに閉ざされていて、洗いにくいこと甚だしい。ベビーバスの中…

育児漫遊録(35) 頸は燃えているか? Ⅰ

生まれてこの方、鉗子で引っ張られた痕こそ痛々しかったけれど、あっちこっちがむっちりむちむちで、これぞ健康優良児と思い込んでいた親馬鹿は電撃的に打ち砕かれたのであった。 「頸の方がちょっとアレかなぁ。」 まだ頸もすわらない時分であったか、我が…

育児漫遊録(34) ミルトンよさらば Ⅲ

おかげさまで、先日我が子はついにミルトンを卒業した。つまり離乳食が開始されたのである。 物の本によると哺乳瓶等の消毒は、離乳食の開始時期ごろまでと説かれており、ということはそろそろ何だかんだと免疫が付いてくるのが、このくらいの時期なのだろう…

育児漫遊録(33) ミルトンよさらば Ⅱ

「コスパ」ばかりではない。最近は「タイパ」などと略して費用対効果ならぬ時間対効果もまた消費行動ならびに、日常生活の様々な価値基準に組み込まれることがあるらしい。 ならばこの「ミルトン」は、日に一度ならず大鍋に湯をぐらぐらと湧かす必要がない分…

育児漫遊録(32) ミルトンよさらば Ⅰ

大鍋にぐらぐら湯を沸かして、毎晩のように父や母が弟の使った哺乳瓶を煮ていたのを覚えている。 煮沸の時代からいつの間にか、世は「ミルトン」の時代になったらしい。会う親戚ごとに「哺乳瓶を毎晩」というお話しを伺ったわけであるが、ミルトンの有り難さ…

育児漫遊録(31) 注射の心得 Ⅴ

ついとこの間打ったばかり、なんて思っているとまた直ぐに一月後の予防接種が迫っている。目を真っ赤に充血させて世話している時には、延々と飴のように続くかに思われた時間が、殊注射となると昨日の今日みたいにやってくる。時間とは何と行き当たりばった…

育児漫遊録(30) 注射の心得 Ⅳ

「おっ、一気呑みかな?」 お医者さん監修のもとで、我が子は『ビフ』の経口投与ワクチンを脇目も振らずに一気呑みしている。珍しい味なのだろう。生まれてこの方二月あまり、乳より他のものを味わったことがないのだから無理もなかろう。 まぁ、経口ワクチ…

育児漫遊録(28) 注射の心得 Ⅲ

かつて私の母は、これから注射を受ける幼い私に「痛いぞ、痛いから泣くなよ。」と言って聞かせたそうである。 なぜそんなことを言ったのか尋ねたら、何と言うことはない「痛くないわけがないから」だそうである。なるほどこれは一理ある。 方便とはいえ「痛…

育児漫遊録(26) 注射の心得 Ⅰ

一体何発打つんだ? 母子手帳を開いてまず驚いたのを覚えている。見開きに細かな字でびっしり、ありとあらゆる種類の予防接種が並んでいる。「水疱瘡」や「おたふく」「はしか」「BCG」あたりは私もやったり罹ったりした覚えがあるけれど、「ビフ」だとか…

育児漫遊録(25) メリー大好き男 Ⅴ

メッサーシュミットを模したような戦闘機が二機と、近未来的なフォルムをしたヘリコプター二機とが入り混じれて我が子の頭上をぐるぐると旋回している。 もしかすると曲目の中に「ワルキューレの騎行」でもあるのじゃないかと箱書きを確認してみたが、シュー…

育児漫遊録(24) メリー大好き男 Ⅳ

メリーを製造販売しようと思った企業の開発担当者が、端っから「よし、デラックスメリーをつくろう!」とするはずがない。スタンダードなメリーがあるからこそ、デラックスがあるのであって普通のラーメンがあるからこそ特盛りラーメンを拵えてみたくなるの…

育児漫遊録(23) メリー大好き男 Ⅲ

「おれのメリーはさぁ、プーさんのメリーだったんだよ。しかもデラックスのやつでさぁ。」「あっ、わたしもわたしもー!」「ぼくも同じのだったよ。なっつかしいなぁ。」 将来我が子が幼稚園か何かに通い始めた時に、同期からそんなことを自慢されて、自分の…

育児漫遊録(22) メリー大好き男 Ⅱ

西松屋のどこに何が陳列してあるか、だいたい飲み込めて来た私は玩具コーナーを目指してずんずん店内を進んでいく。途中ミルク売り場を過るに及んで、ちらっと「明治ほほえみ」の値段などを確認したが、なるほど今日は特売でないとみえていつもの定価である…

育児漫遊録(21) メリー大好き男 Ⅰ

「そうだ、それがあったか!」 言うが早いか西松屋へ飛んでいったのは、殊のほか赤ん坊のことに関してはなにかとそそっかしい親父である。 彼の頭には今し方覚えた〈メリー〉という言葉がどかりと鎮座ましましていて、今すぐメリーを買いに行くべし、という…

育児漫遊録(20) 上から下から Ⅳ

調べたところによると、排便の頻度は子供によってかなり個人差があるということである。 一日一度、オトナみたいにまとめて出すことが多い我が子であるが、時にその帳尻が狂って出し損ねる日がある。すると彼の腹はぽっこり小山みたいに張り出して、四六時中…

育児漫遊録(19) 上から下から Ⅲ

あんまり頻繁にゲーゲーしているものだから、流石に心配になって小児科の先生にも相談した。するとこの月齢的には胃袋の構造上仕方の無いところがある、とのこと。これは時間が解決するたぐいのものであるそうだ。 それはそうと、ゲーよりも寧ろ先生の診断は…

育児漫遊録(18) 上から下から Ⅱ

転がされているだけなのに、やたらニコニコしている時がある。そんな折りは「あら、めんこい!」なんて、家人が群れ集うのは自然の理であるけれど、ゆめゆめ油断してはならない。満面の笑みと共に大量のミルクが吐き出されて、わが家のお茶の間は阿鼻叫喚の…

育児漫遊録(17) 上から下から Ⅰ

甚だ尾籠な話でありまして、お食事中の方々におかれましては、どうかお済みになってからお読み頂きたくお願い申し上げますことには、赤ん坊というもの、のべつまくなしに「上から下から」あれやこれやを出すこと頻りであって、赤ん坊の赤裸々なところを語る…

育児漫遊録(16) 授乳夜話 Ⅴ

まずミルクをつくり、水を張った容器にドブ漬けする。しかるのちにゆっくりオムツを替え、低い音でジャズなどをかける。そんなことをしているうちにドブ漬けしたミルクがいい塩梅に冷めている。 わざと壁に向けたベッドサイドの灯りが間接照明になり、彼が好…

育児漫遊録(15) 授乳夜話 Ⅳ

私はミルクも乳も飲まなかったと言う。 幸いにして我が子は私に比べればどちらもいける口であるし、その点だけでも遙かに育てやすいはずだ、と私の母親は言う。そうは言っても目の前で火の付いたように泣きしきる新生児と相対する午前三時は「すさまじ」とし…

育児漫遊録(14) 授乳夜話 Ⅲ

まずはオムツを替える。しかるのちにミルクを作って冷まし、泣きしきる我が子を抱き上げる。彼は「赤べこ」みたいに据わらぬ首を闇雲に上下左右に振り回しつつ、真っ赤な顔してこの世の終わりみたいな風情で暴れている。 どうどう、どうどうと宥めすかすより…

育児漫遊録(13) 授乳夜話 Ⅱ

「そんな苦労も今ならではの苦労だから」と言われたこともある。なるほどこれは一理ある。私の頭が白くなったあたりに、目尻をだらしなく垂らすなどして、この息子や孫にそんな事を申しているような気がしないでもない。 さはれ頭では分かっているけれど、実…

育児漫遊録(12) 授乳夜話 Ⅰ

陽水の「リバーサイドホテル」に「夜の長さを何度も味わえる」というのがあったかと思う。果たしてそれは「ベットの中で魚になったあと、川に浮かんだプールで一泳ぎ」する二人の甘美な世界を詠うものなのだろうが、ふと私がこの一節を想起したのは激しい眠…

育児漫遊録(9) 沐浴エレジー Ⅱ 

こんな時にスマートフォンでユーチューブが視聴出来るのは有り難い。一昔前ならばここでパソコンを立ち上げ、有線のインターネット回線に接続して後に、ようやくカクカクした動画を視聴出来たものであるが、まめまめしき情報ならば即座に手に取れるのが現代…

育児漫遊録(8) 沐浴エレジー Ⅰ

初めて教壇に立った時がそうであった。 大学を出て四月が来て「ハイ、じゃあ先生お願いします。」と言われてチャイムがなる。指導案なんてものはいくら書いても所詮は抽象的な産物であり、机上の空論に過ぎない。ナマの生徒を相手に狼狽しているヒマもなく、…

育児漫遊録(7) これは正解なの? Ⅲ

肩らしき部分にパット付きのショルダーベルトをあてがい、何となく股だと思われるあたりに見当をつけてベルトをロックする。 いよいよ正解が分からない。どう頑張ってもショルダーの位置に然るべきショルダーを用意することは出来ないし、お股は折り重なる布…

育児漫遊録(6) これは正解なの? Ⅱ

正解が分からない。 これが正しいチャイルドシートの使い方なのであろうか。明らかにこれは「嵌めただけ」である。おくるみをようやくのことで引っぺがした我が子の本体を嵌めてみたのだけれど、これでは固定もへったくれもないではないか。 どこに足がある…

育児漫遊録(5) これは正解なの? Ⅰ

用意した可愛らしいグリーンのベビー服に「着られて」産院から出てきた我が子を、はじめてチャイルドシートに乗せる。 彼はベビー服を「着ている」のではなくて、どう見たって「着られている」としか形容することが出来ない。手は閉じられた胸のボタンの下で…

育児漫遊録(4) 一日一時間 Ⅱ

どれだけその一時間があっという間かと言えば、子供の時分に宿題やら何やらを死に物狂いで片付けて勝ち取ったゲームの時間くらい、と応えるべきだろうか。 新しいゲームを買ってもらった昔日の私も、目覚ましく不思議な玩具が目の前に立ち現れた今の私も、畢…