かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

育児漫遊録(25) メリー大好き男 Ⅴ

メッサーシュミットを模したような戦闘機が二機と、近未来的なフォルムをしたヘリコプター二機とが入り混じれて我が子の頭上をぐるぐると旋回している。 もしかすると曲目の中に「ワルキューレの騎行」でもあるのじゃないかと箱書きを確認してみたが、シュー…

育児漫遊録(24) メリー大好き男 Ⅳ

メリーを製造販売しようと思った企業の開発担当者が、端っから「よし、デラックスメリーをつくろう!」とするはずがない。スタンダードなメリーがあるからこそ、デラックスがあるのであって普通のラーメンがあるからこそ特盛りラーメンを拵えてみたくなるの…

盆栽百計「レスキュー赤松の改作」③

いい加減蒸してきた七月の軒下で、なんとか予定通り(?)にはまとまったような気がする。 奥まったところに蟠っていた旧樹冠部を切り落とし、以前はそれほどでもないチョイ役を担っていた枝が、まさかの大出世というか、どうしようもない窮地をよくぞ救ってく…

盆栽百計「レスキュー赤松の改作」➁

ギブスとは言いながら、こんな物騒なギブスなどそうそうあるものではない。 枝に沿わせるようにして、一本二本と太い(4ミリくらい)の針金をあてがう。この上から麻の紐をギリギリと巻き付け締め上げ、枝に沿わせた針金をしっかりと固定してゆく。プロである…

盆栽百計「レスキュー赤松の改作」①

先日『盆人漫録』で取りあげた「レスキュー」してきた赤松は、わが家の庭で目下養生と矯正の真っ最中である。 赤松は雄々しい黒松に比してやわらかな針葉と、古くなるにつれてツヤを増す赤肌とその細やかな肌具合から女松(めまつ)と呼ばれて親しまれてきたわ…

些事放談 「一行半」

何とも手軽な世の中になったものである。 習い事を一つ辞めるにせよ、SNSの短文一本。 「塾、辞めます。手続き要りますか?」 というのを受け取ったご同業の話を聞いて、他人ごとながら頭にきた、というよりも寧ろ哀しいような諦めに似た気分を覚えた。 …

教育雑記帳(64) 違うものは違う Ⅱ

「国語」の学習において、私は子供といえども決して容赦は致しませぬ。彼らから打ち返されてきた答えを受けたら、あらゆる誤読の可能性を探り、彼らが迷い込んだ袋小路の出口へいち早く先回りし、時に綿密な対話と言葉の擦り合わせを繰り返しつつ、「違う」…

教育雑記帳(63) 違うものは違う Ⅰ

『子供が勉強で間違えても「違う」とは言わないようにする。』 この頃こんな教育方針を耳にしたのですが、これに如何ともしがたい違和感を覚えてしまう私は旧弊な人間なのでしょうか。 一応私は国語畑の人間ですから、自分の授業や指導の中では極力、子供達…

盆栽と暮らす(7) 飾ることの意義

やはり盆栽は飾ってナンボ。と申しますのも、盆栽が歴とした文化芸術の一翼を担っているがためであるとともに、実のところ飾ることは愛好家的にも結構メリットが大きいと思う節が多々あるがゆえにほかなりません。 展示会に出すにせよ、お家にちょこんと飾る…

育児漫遊録(23) メリー大好き男 Ⅲ

「おれのメリーはさぁ、プーさんのメリーだったんだよ。しかもデラックスのやつでさぁ。」「あっ、わたしもわたしもー!」「ぼくも同じのだったよ。なっつかしいなぁ。」 将来我が子が幼稚園か何かに通い始めた時に、同期からそんなことを自慢されて、自分の…

育児漫遊録(22) メリー大好き男 Ⅱ

西松屋のどこに何が陳列してあるか、だいたい飲み込めて来た私は玩具コーナーを目指してずんずん店内を進んでいく。途中ミルク売り場を過るに及んで、ちらっと「明治ほほえみ」の値段などを確認したが、なるほど今日は特売でないとみえていつもの定価である…

盆人漫録(38) 赤松レスキュー Ⅲ

「なにやら見覚えがある・・・」と、私が矯めつ眇めつその赤松の一鉢を検分せねばならなんだのは、私の記憶の中にあったその往時の姿と今の姿とが、およそかけ離れてしまっていたがためだったのです。 かつて青々と繁りかえっていた樹冠部の枝は全て枯れ上がっ…

盆人漫録(37) 赤松レスキュー Ⅱ 

そんなでもないさ、と思って取りかかる作業ほど泥沼化することは、ベトナム戦争の例を引くまでもない。 「鉢は、庭のあっちこっちに転がってあるから、どれでも何個でも欲しいだけ持ってってくれ」というお言葉に甘えて、お庭に分け入ったわれわれを待ってい…

塾生心得 七月のおたより

二十年も前の夏はこんなに暑くるしくはなかった。と言われても、生徒のみなさんはポカンとしてしまうことでありましょう。 しかしながら、二十年も前の夏はWi-Fiもとんでいなかったし、そもそもスマホだってありませんでした。と言われたら「ウソ、マジで?…

盆人漫録(36) 赤松レスキュー Ⅰ

「ウチの鉢と、残った樹を引き取ってくれ。」 という盆栽仲間からの依頼は、残念ながら一度や二度ではありません。年齢的なものや健康上の理由から、どうにも盆栽を続けていくことがままならなくなる時は、いづれの愛好家にも等しくやって来るのです。 果た…

育児漫遊録(21) メリー大好き男 Ⅰ

「そうだ、それがあったか!」 言うが早いか西松屋へ飛んでいったのは、殊のほか赤ん坊のことに関してはなにかとそそっかしい親父である。 彼の頭には今し方覚えた〈メリー〉という言葉がどかりと鎮座ましましていて、今すぐメリーを買いに行くべし、という…

盆人漫録(35) ベニモンアオリンガ! Ⅲ

シンクイムシという厄介者の存在は知っていたけれど、実のところその本体を目の当たりにして「こいつがシンクイムシで、ベニモンアオリンガの幼虫である。」と確認したことはありませんでした。 何せ、葉っぱの状態を見て虫がいると分かったら(いや、分かっ…

盆人漫録(34) ベニモンアオリンガ! Ⅱ

そういえば、先生は去年の今時分もホワイトボードに「ベニモンアオリンガ(シンクイムシ)」と記していなかっただろうか。そんな遠い記憶が、デジャブのようによみがえる気がしないでもない月曜日の午前中。 同好会のメンバーはそれぞれのサツキを前に、ぱちり…

盆人漫録(33) ベニモンアオリンガ! Ⅰ

われらが顧問、平先生には足かけ十年わざわざ隣町からお越しいただいている。 サツキ展後の教室は、毎年恒例の大剪定大会となるわけで、咲き終わった花を全て摘み取って、今年の春からぐんぐん伸びた芽をだいたい元の位置まで切り詰める作業に追われます。 …

教育雑記帳(61) グラグラの土台 Ⅱ

●「非積み木型」学習者 積み木で遊ぶことが出来ない人間があるとしたら、彼はおそらくそれを積まずに散らばして満足するのではないでしょうか。 バラバラに散乱する積み木を「非積み木型」学習者の秩序立っていない、言うなればカオス状態な頭の中と見立てて…

教育雑記帳(60) グラグラの土台 Ⅰ

●「積み木型」学習者 「ンなこと言ったって、オモテなんて上がらねぇよ。なにせ土台が腐ってるって、この間も、そう言ってやったんだよ。」 というのは落語でお馴染みの大工さんの台詞。この一節が私の口をついて危うく出そうになったことの発端は、とんでも…

育児漫遊録(20) 上から下から Ⅳ

調べたところによると、排便の頻度は子供によってかなり個人差があるということである。 一日一度、オトナみたいにまとめて出すことが多い我が子であるが、時にその帳尻が狂って出し損ねる日がある。すると彼の腹はぽっこり小山みたいに張り出して、四六時中…

育児漫遊録(19) 上から下から Ⅲ

あんまり頻繁にゲーゲーしているものだから、流石に心配になって小児科の先生にも相談した。するとこの月齢的には胃袋の構造上仕方の無いところがある、とのこと。これは時間が解決するたぐいのものであるそうだ。 それはそうと、ゲーよりも寧ろ先生の診断は…

育児漫遊録(18) 上から下から Ⅱ

転がされているだけなのに、やたらニコニコしている時がある。そんな折りは「あら、めんこい!」なんて、家人が群れ集うのは自然の理であるけれど、ゆめゆめ油断してはならない。満面の笑みと共に大量のミルクが吐き出されて、わが家のお茶の間は阿鼻叫喚の…

育児漫遊録(17) 上から下から Ⅰ

甚だ尾籠な話でありまして、お食事中の方々におかれましては、どうかお済みになってからお読み頂きたくお願い申し上げますことには、赤ん坊というもの、のべつまくなしに「上から下から」あれやこれやを出すこと頻りであって、赤ん坊の赤裸々なところを語る…

塾生心得  ただいま勉強中 Ⅳ

新しいことを学びはじめる時、大切なことは何でしょうか。 私は「言葉を手に入れる作業」だと思います。自分の知らないことを学ぶに及んで、まず最初の関門となるのが「言葉」なのです。 「同じ日本語で書いてあるのに、何が書いてあるか分からない・・・」とい…

塾生心得  ただいま勉強中 Ⅲ

要点「だけ」をドカンと覚える。 つまりはテストに出そうなところだけを効率的に頭へ詰め込んで、とにかくあらゆる問題のパターンを網羅して、その攻略法をガリガリ勉強していく・・・それが私のかつての勉強スタイルでした。このような「点取り虫」的な勉強は…

盆人漫録(32) 同好会のイジ

さぁ、大変です。 今年もやってきた「令和五年度サツキ展」に、私が出すサツキが無いのは毎度のことながら、そんなことよりも大変な事態がわれわれ同好会を見舞ったのであります。 それは深刻な人手不足。不慮のアクシデントによって、会場設営や展示準備を…

盆栽と暮らす(6) ウチの中に樹!

盆栽を飾る。するとウチの中に一本、鉢に入った樹が鎮座ましますことになるのは当たり前のことであります。やり方は実に簡単。芽を出したり、花が見頃をむかえた一鉢を「今日はウチん中に来てよ」とばかりにラチって来て、泥などの汚れを拭いてやり、ひっく…

自作解題「令和五年度サツキ展」③

Ⅲ、違い棚の部(右から順に) ●イワシデ 毎度のご登場なれど、そこのところはご愛敬。なにせ六月の展示会の折りには瑞々しい若葉を漲らせ、晩秋の展示会の時期には、ねらったような紅葉で猛アピールをしてくるものだから、愛好家としてこれを飾らないわけには…