かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆・歳時記 其の五

仕立て鉢
 素焼きの鉢、あるいはダオン鉢なんて言い方をする。これに入っているのは、挿して一年、二年生の若手だったり、永らく棚場のスタメンを張ってきたけれど、惜しいかな故障につき二軍で調整中のベテランの樹だったりする。
 風通しの好い快適な療養所で鋭気を養いながら、「いつかは」という日を待っている。次の植え替えで狙うはお高めの鉢、飾り棚のトップ。そして何より仕立て鉢は、樹のみならず愛好家のお財布の強い味方だったりもするのである。

同好会

 ただ一人、盆栽を独学し、育て磨き上げ、自ら飾り自ら愉しみうる人を私は拍手を以て讃えよう。私にはそれが無理だからである。気を抜けば草を引かない。そのうちになむ、と称して一日バッハを弾いていたりする。だから月二回、尻を叩かれにいく。新しい刺激をもらいに同好会へ顔を出す。
 そこは多様性の宝庫である。つくり屋、育て屋、蒐集屋、様々のタイプの愛好家が一本の樹をめぐって、ああでもない、こうでもないとやっている。好み、価値観はそれぞれ違えど、そうでなくては面白くないし、みんな盆栽が好きという根っこの部分では一緒なのだ。

徳江さん

 十月も終わりの夕まぐれ、人の入りの途絶えた展示会場で声をかけられた。ベンチコートで寒さをしのぎつつ、私と同じくらいの背丈の小柄なおじいさんは、驚くほどハリのある声で「あんだも、もし興味あったら、見るばりでもいいがら、ウヂの会さいっかい来てみだらいいっちゃ。」と誘った。
 本屋で買った入門書を片手に、ぼっちで盆栽をいじくりだした私にとって、このど直球のお誘いはどストライクであった。お陰様で今こうして曲がりなりにも盆栽を愉しみ続けている私がある。また一緒に樹をつくれる日を心待ちにしつつ、今こそ徳江さんに代って「そこのあんだ!」。

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