かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆・再考 波平さんを想う

「盆栽とは?」と世の中の人々に問いかけるとします。大方の人はやはり、おじいちゃんの趣味、あるいは直感的に「波平さん!」と応えることでしょう。波平さんが日当たりの良い縁側で、松の盆栽をチョキチョキしている。たまにカツオ君が野球ボールで棚場の鉢をかち割って、それを何とか隠蔽しようとして失敗して益々大目玉を食らう、というのがわが国において最も人口に膾炙された、盆栽のある風景の一コマではないでしょうか。
 なるほど波平さんは禿茶瓶で、着物だって渋いし、チョビ髭だったりして、それこそ盆栽はハッピー・リタイアメントした団塊世代特有の持ち物である観が強いものです。しかし、よくよく考えると波平さんはまだ会社勤めもしているし、下の娘だってまだ小三の現役パパ。因みにあの縁側で松をチョキチョキやるのだって、実を言うと年に一回きりの「芽切り」なる作業だったりするわけで、盆栽愛好家ならば、「お! 芽切りやってるな!」と食いつく、重要なシーンであったりするわけです。
 何が言いたいのかと申しますと、この波平さんの盆栽ライフから分かるように、盆栽は決して年配だけが楽しむものではなく、仕事をしながらだって十分に楽しめるものなのです。かつての盆栽ブームを支えたのは、この波平さんに代表される当時現役バリバリの団塊世代でした。その方々が変わらぬ情熱を注ぎ続けてきたからこそ、「盆栽」という文化が廃れることなく今を生きているのだと、私は思うのです。
 日曜の度、同好会の盆栽用具を愛車の軽トラックに積んで出かけてゆく私に、妻はあきれておるやも知れないけれど、たかが趣味、されど文化のバトンを渡されたからには、私もまた次の世代へこれを繋いでゆかねばならぬのです。止めるな妻よ(別に止めてはいないけど)走れやトラック。来たれ新たな入会者!

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