私、ワープしたことがあるんです。と言うと、なんだかヤバい人のように聞こえますが、もそっと言葉を補うならば、私は国語の教材で二〇〇枚ほどすっ飛ばして学習していたことがあるのです。G1の101番から気が付いたらG2の101番まで、某宇宙戦艦ばりのワープをしていたことが後年わかったのです。
なぜそんなことが起きたかというと、最初は単純な手違いで、同じ棚の引き出しに入っていた教材がすり替わってしまっただけだったのでしょうが、それを私が宿題として解いて翌週に提出したものだから、先生もついとその続きを出したというわけで、私は突如G2学習者となったのです。「ふつう、気づくだろ」というご批判もあるかとは思いますが、当時のピュアたりし小学生の私は、国語も中学生の教材になると、100番単位でグレードが変わるのかと本気で思っていたのです。しかしながら、現在の私の脳内には「いやいや、レベルも変わってるはずだべや」というごもっともなご指摘も聞こえており、その点につきましては「おっ、活字が小さくなったぞ! しかもムズくなってる!」というアゲインストの風がスポ根的なやる気を起こさせるものだったらしく、むしろ普段より頑張って攻略したくらいなのでした。
それからしばらくして母が公文の教室を開いた折に、教室を移籍した私の進度グラフを処理してようやくこのワープ事件が明らかとなったのですが、折角だから飛ばしてしまった分をちょっと戻ってやってみると、これが随分と簡単に思える。そりゃ、これから行くはずのステージでレベル上げをする裏技を使ったのだから当然ではありましょうが、自分の成長具合をへんてこなタイミングで実感し、「公文って、すげェな」と感じたものでした。
こんなこともありましたけれど、いまでも私の推しは何といっても国語です。文章にかじりつくようにして読んでいけば答えは必ず見つかる、これが私のワープ式学習法(荒行?)から学んだことでありましたが、やはりそんなのは止した方がいい。そのレベルに相応しいコースを一歩一歩踏みしめ、その折々の場所から見える景色を愉しんだほうが、よっぽどいいに決まっているのですから。