もちろん後になって聞いた話です。中新田の旧教室に通っていた頃は、私が広告塔として機能していたらしく、同級生を中心に入会者がけっこう増えて、母が先生にお礼を言われる、なんてこともあったそうです。そんなことに思い致すこともなく当時の私は、なんだか気がつくと公文の教室に自分の顔馴染みの増えたのが心強くて、無邪気によろこんでいました。
今では週6で習い事なんてことも当たり前な時代になりましたが、あの頃は何かひとつでもやっている方が珍しかったのです。だから確かに「ぼく公文に行ってる」と云うことを発表したい心理はあったのだと思います。計算速いね、とほめられたら「公文やってるから!」、音読の達者をほめられたら「公文で国語やってるから!」とまあこんな風に、われながらなんて素晴らしいプロパガンダ少年だったのかと感心してしまいます。
しかしながら昨今は少し事情が違ってきているのも事実です。広告塔になるような生徒を育てれば、クラスメートがぞっくぞくという感じにはならなくなってきたのが、ここ二年くらいの現状です。やはり元凶は例の流行病。これによって授業参観だとか懇談会だとか、親御さんたちが顔を合わせる機会がなくなったことで、「お宅の息子さん、何かお習い事やってるんざますか?」系の会話がなくなってしまったことが影を落としているのだと思います。
お習い事が多様化されまくったことも、その要因の一つではありましょうが、やはりここはへこたれずにズバ抜けたプロパガンダ少年、広告塔子ちゃんを育成し続けるにしくはないのでしょう。