かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

定点観測(12) 見る目のある子供たち

 ちょうどカーブへさしかかる電車に揺られた塩梅である。一瞬静止したかに見えた上体が少し仰け反る。通りすがりざま、人の書いているプリントをのぞき込んだ目が、ひょろひょろっと泳ぐ。そうして何食わぬ顔して自分の席へ戻っていくけれど、その内心の動揺たるや、机上の鉛筆にコロコロッと逃げられるぎこちない挙動にすべて現れている。子供は自分よりスゴいことをやっている人間に、誰よりも敏感である。わずかな誤差をして、まぁ、だいたい同じでイイんじゃね? とみなすのはオトナの得意とするところではあるけれど、子供の目はたいへんな精度で自分と人との違いを、違いとして認識する。
 2の段に悪戦苦闘する子は、4の段を諳んじる子に憧れ、二桁の割り算をはじめて学ぶ子は、四桁を易々と割っていく子を驚愕のまなざしを以て見つめる。「うわっ、コイツ学校じゃフツーの奴だと思ってたのに、なかなかどうしてヤベぇ奴じやん。」という心の声が、通りすがりに人のプリントをなに食わぬフリしてチラ見する彼らの一挙手一投足に、にじみ出ている。
 学校の天井はある程度伸びるとすぐに頭打ちになるリミット付きのそれであるのに対して、公文のそれは青天井。上には上があって、またその別次元をひた走る人々に心を打たれっぱなしな日々を子供たちに約束している。優越感を噛みしめている閑などないのだ。彼らのハングリーな見る目は、自分より千歩先をゆく人を尊敬するし、今日の自分より一日先をゆく人の背中をいつも注意深く観察している。