かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

定点観測(15) 広告塔の借り猫

 「お前さん、今度小学校にあがるんだろう?」「うん、そうだよ、こんど一年生になるよ。」「お前さんくらい勉強が進んでる子は、同じ学年にゃ、そうそういないだろうよ。」「うん、だってさ、ぼく引き算の筆算やってるしね。」「左様。ほめられた時には、きっとみんなに宣伝せにゃあならないよ。」
 と、今日も私は無邪気な子供を、わが商いの広告塔に仕立てようと画策している。この子が学校で目立てば、ぼくもわたしもという塩梅で教室を尋ねてくれる子が増えるのではなかろうか、と期待しているのであるが、なかなかどうしてこれが一筋縄ではいかない。
 「さて、これから学校で『君は、実によく勉強が出来るね!』とほめられたら、何と応えるかね?」「えーとね、『うん、ありがとう。』って言うよ。」「お、おう、そりゃそうだ。確かに礼を述べることは大切だ。大切なんだけれど、そこでもうひと言ほしいわけだよ。」「あっ、そっか!」「そうそう、そうなの、ホレ、言ってごらん。」「えとねぇ、『だから君も頑張ってね!』って言うね。」(ト、一同ズッコケる。)
 そこは『ほなみ教室で公文やってるからね!』と応えてほしいところではあったが、流石にこれ以上の介入はオトナとしてどうなのかと、私の倫理観が黄色信号を出したし、おなか一杯愉快がらせてもらったので止した。しかしながら、生徒獲得という問題も、どうして私たち夫婦の米櫃に直結する懸案事項である。だから、このほめられると借りてきた猫みたいになってしまう彼には、また一層奮起してもらって、立派な広告塔の役目を果たしてほしいものである。

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