どこか遠くへ行ったら、ウチに帰ったときのことに思いを致し、公文へやってきたら一刻も早くウチに帰るために奮闘する。それが子供のホンブンというものではないだろうか。
いつだってウチは安全基地であり、お母さんに今日のことを報告するまでが、彼にとって、彼女にとっての本日の冒険なのである。
そして、ウチの外における彼らは、オトナが驚くほどマジメである。どんだけクラスメートとふざけ騒いでやってきても、一歩教室に入ればサッと雰囲気が変わる。今日与えられた課題をそれとなくチェックし「ふんふん、こんなもんか」とイメージトレーニング的なことをしていたかと思えば、もう机にかじり付いてプリントを解き始めている。
十分や二十分早く今日の公文を終えたとて、そうそうボーナスがあるわけではなかろうに、彼らは一刻も早く仕事を片付けようと、虎視眈々自分のプリントが採点済みボックスへ差されるのを待っている。
さはれ、皆がみな一様に短時間で終われるわけではない。思いの外の苦戦となったり、間違いがいつまで経っても直らなかったり、そうしていると次第に子供の素顔が出てくる。
二回三回と間違えて、「自分はもう帰れないのじゃないか」と泣き出す少年があれば、その一方では「ふーん、だってこんなの分かんないし」という顔で、しれっとしている少女もある。比較的男の子が泣く傾向にあるのも面白いところである。
泣くというところで見ると、一昔前はやはり、泣きに入る前の「ウチへ帰れなくなる」がダントツであったけれど、最近はそんな様相も変わってきているのか、「何時間居たってへっちゃらさ」というタイプも登場してきた。これもまた夫婦共働きのご時世を反映しているのだろう。
とまれかうまれ、流行病もあるわけだから、子供は短期集中で勉強を片付けてウチへ帰ったほうがいいし、何よりも「ウチへ帰るのが楽しみな子」を育てるにしくはないのである。