かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

定点観測(18) DJとの夕べ First session

 DJは日暮れてやって来る。長く顔を見なかった時などは「ゴブサタしてまーす」と言って教室へ入ってくる。全く腰の低いDJである。すらりとした体格に、少しだぼだぼめの、いまめきたるTシャツを合わせて、これがなかなかキマッている。そうした方面に対してどうにも疎い私なぞは「DJみたい」としか形容することが出来ない。

 さはれ、このDJとの夕べは何だか愉快なのである。別に彼がふざけたり、へんな調子で歌ったりするわけでもない。確かに時々そのTシャツのメッセージ性が、スタッフ一同をどぎまぎさせたりもするけれど、当人も知らないで着ているのだろうし、他意がないことは分かりきっている。寧ろ誰よりも真面目に教室で勉強して、その日の課題を愚直にクリアして帰るのだけれど、その折々にチョイスされる言葉であるとか、パフォーマンスがこれまた私の心にササってくるのである。

 「ゴブサタです」しかり、「イササカ分からないンですけど」とか、驚いた時の「What`s!」であったり、年下の友人のおばあちゃんに「私、しかじかとと申します。」と挨拶してみたり、彼の口から次に如何なるコトバが飛び出すものか、それを期待させてしまうだけでも「DJ」たる素質はバツグンなのである。これはひとつに彼のお家の言語環境が豊かであることの証なのだろう。

 またある時は学習が終わってから、おもむろに鞄から何かを取り出して、そいつをこれまたおもむろにチラ見せしてきたので、とうとう堪らなくなって尋ねた。するとその物体は一見するところ普通のミニカーであり、少なからず拍子抜けしたのであるが、大丈夫、やはり彼はひと味もふた味も違った。

 「パテで盛ったンすよ。」「え? マジすか?」「ステップはやっぱりこうでないとですよね。」見ると、下回りが微妙に肉付けされていて、その上から綺麗にコーティングまでしてあるではないか。素敵にマニアックである。これには私も、一本どころでなく百本も取られてしまったわけである。

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