かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

軍隊学校之記(8) 寝る子は育つ

 過去のある一瞬に数秒間だけ戻れるようなミラクルがあったら、みなさんはかつての自分に何と語りかけるでしょうか?

 それが大学時代だったら、私は酔っ払って教育実習の大事な日誌を紛失する前の私に「自転車で帰るのは止せ!」と言うでしょう。では、それが高校時代だったら、別にどのタイミングでも構わないから、ムダに眠気と闘う私の肩をトントンと叩いて「ちゃんと寝ろ。早く寝ろ。」と一喝して事足りるでしょう。

 とにかく宵っ張りをしました。一時、二時は当たり前、なんでそんなに夜中まで机にしがみついている必要があったのか、それで如何ほどの収穫があったものか分かりませんが、習慣というものはおそろしいものです。

 あれから十年以上の歳月を経て、すっかり冷えた頭で考えると、全く以てナンセンス。第一、そうして慢性的な寝不足を抱えて受ける授業など、効率が悪いにもほどがあります。さすがの教官たちも白目を剥いて睡魔と闘う私には、やさしく注意してくれましたが、勉強の主戦場を授業ではなくて深夜の机に持っていった大愚策は、今なお悔やみきれぬものとしてあります。

 毎日ほぼ毎時間の小テストとその追試のプレッシャーから逃れるべく、とにかく必死であったことは確かです。しかし授業中にある程度の整理が付くように頭をちゃんと使って、二手先三手先の対策をその場で打てておれば、そんなことにもならなかったはずなのです。そのためには「ちゃんと寝る」ことこそが、科学的なお墨付きすらある最大の得策なのです。

 この際だから白状してしまえば、あれほど睡眠時間を削ったのには今ひとつの理由がありました。それはライバルに先を越される不安であり、もし先に寝てしまったらその間に水をあけられてしまうのではないか、という強迫に囚われ続けていたことに因るものなのでした。

 まさに本末転倒、眠気を我慢してロクな勉強も出来ておらぬクセに、そんな気休めのために夜を更かして翌日はまた必死に眠気と闘う。せっかく発達しているところの脳みそには随分と申し訳ないことをしたと思っています。

 そして今もまた、あの軍隊学校ばかりでなくて、日本全国どこかの進学校にも、あの頃の私と同じような負のスパイラルに陥っている生徒は必ずいるはずです。ぜひとも彼らには、頭の正しい使い方に気づいてもらって、「何にも気兼ねすることなく勉強ができる」という青春の貴重な時間を有意義に使ってほしいものです。
 
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