あすこをてろてろ歩いているのが、主人公の彼である。ランドセルの肩掛けが外れていて、上着が片肌脱ぎで、シャツがズボンからはみ出しているのが彼である。
いつも一人で歩いている。よく見るとちゃんとまっすぐ歩けていない。頼むから前を見て歩いてくれろと見守る私は気が気ではない。ああして一度お家へ帰って、そしてまたこの陽の当たる表通りをてろてろ歩いてやってくるのだが、教室に入ってどうにも覚束ない声で「コンチワ」をしたまま突っ立っている。
ほれ、次は何をする? と声をかけてようやく動き出す。ゆっくり公文のバックを開いて「宿題、ワスレタ」「えんぴつ、ナイ」となると、君はいったい何をしにやってきたのだ、と言いたくもなるが、そこはガマンのしどころ。これでも申告ができるまでには成長したのだ。
いざ勉強がはじまると、記名が名前の途中で終わっているから「誰?」ってなったり、消防自動車の「じぷた」本人が火事になっていたり、まさに珍回答のオンパレード。それでもこのごろは、「じぷた」が燃えちゃっていることに、自分で気がついたりできるようになったのだ。
まだまだてろてろしてはいるけれど、伸びしろがあると云うことは、その分成長が見えやすいと云うことでもある。それゆけ、てろんてろん。