かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

教育雑記帳(12) 見る親、見ない親

 「うちの子が早く次のステップに行きたいと言っていて、」

 さて、この後に続く言葉を想像してみてください。

 なるほど、これはポジティブにもネガティブにも、どちらにでも転びうるフレーズであります。公文の教室をしていると、年に数回はこの手の相談が寄せられるわけですが、正直なところ「もっと頑張りたいと言っています。」なんという風に転ぶことはまずありません。

 決められた時間内に、正確に解ききることが出来なければ、次へ進むことは出来ないというのが、「公文式」です。それがクリア出来るまで、少し戻って復習したり、数をこなすことで地道に基礎学力を積み上げる方針は、まさに筋力トレーニングのようなものでしょう。

 「うちの子が早く次のステップに行きたいと言っていて、もうこのプリントを何度もやっているようで、早く自分の学年レベルに追いつきたいのに、それが出来なくてイライラしているみたいで。」

 というのが、かつて寄せられた相談の一例なわけです。

 いかがでしょうか、まず以てこれは「子供が言っている」というスタンスですが、ぶっちゃけ親の要求でもあるわけです。学年相当の学習レベルに達しない進捗状況にイライラしているのは、およそのところ親御さんの方なのです。

 しかもこの親御さんは、わざわざそうした要求をしてくるにも拘わらず、当の子供が教室へ持ってくる宿題は抜けがひどかったり、紛失していたり・・・とてもじゃないけれど、そんな家庭学習を通してはかばかしい効果が上がるわけがありません。

 つまるところ、子供の学習状況を把握できないまま、この親御さんは「次のステップ」にばかり拘ってしまっているのです。

 教室に通わせていれば自動的に成績が上がる、と思ったら大間違い。大事なのは、お家でしっかり親御さんが子供の頑張りを監督し、見守ってやることに尽きます。

 そうすれば、まかり間違っても「うちの子ならもう次のステップに行って然るべきだ」というような先入観にとらわれることもありませんし、子供の等身大の学力を把握して、復習の必要性を理解できるはずなのです。

 早く学年相当のレベルに追いつきたい、と思うのは学習が遅れている子供とその親御さんにとっては当たり前の感情でしょう。しかし、そもそもその遅れは基礎学力が十分に定着していないがために起こったものに外なりません。

 ですから、基礎を叩かないまま学年の学習をしたところで、土台が腐っているわけですからどだい無理な話になってしまうのです。

 親が子に寄り添い励ましつつ、一緒に基礎学力のトレーニングに付き合ってやることではじめて、「マジな親」の姿を目の当たりにした子供がマジになってくれるのです。