かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

定点観測(24) 続・てろんてろん物語

 不思議な事件が続いた。

 教室のトイレから次々と備品がなくなるのである。

 私も妻も教室を回すことに忙殺されているものだから、トイレは子供たちの性善説を信じてノーマークのまま、特段何事もなく平穏無事を保ってきたのに、こんなことになるとやりたくもないソウサをしなければならないし、子供にかけたくもないウタガイをかけることにもなる。

 仕方がないから妻と手分けしてこまめに各人のトイレの使用後をチェックしたところ、早速捜査線上に浮上した人物があった。

 教室へ来るたびに何度もトイレへ通うので、それとなしに探っていたところ、今日に限って一度もトイレへ行かない。オカシイなと思っていたところ、妻がトイレの方から手招きしているのに気がついた。

 なんと既にハンコウが行われていたのである。明かり取りの窓がちょこっと開いていて、備え付けのブラシが外の藪に刺さったまま、宵の風に吹かれていた。

 この時教室には二人の生徒しかいない。だからこの時点で自ずからシンハンニンは、確定するわけで…。(後から分かったことであるが、最初にウタガイをかけた人物は、便座の温度をマックスにして籠もりがちなだけのシロ(?)であった。)

 そして、このハンコウが可能であったもう一人とは、以前皆さまにご紹介申し上げた、てろんてろんした彼だったのである。

「ということは、そういうことか?」「だって、五分前に見たときにはなんともなかったし」「あんなにてろてろしてるのに?」「うん。てろてろしてるけど(笑)」

 しらず、私も思わず笑っていたことは言うまでもない。私たちの目がザルだったのもあるけれど、彼にオトナの目をぬすむような芸当が出来たことは新鮮な驚きであった。

 一応こっそり彼に尋ねてみたら、ふよふよっと目が泳いだので「イタズラすっと、閻魔様に・・・」の古典的なオトシモンクで「ゴメンナサイ」のジハクをみたのであった。以来この怪事件は繰り返されていない。

 この調子である。それゆけ、てろんてろん。

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