まずはこんな例文から。
例文Ⅰ
ぼくは学校の遠足で、動物園に行きました。
動物園に到着したとき、雨が降ってきました。
先生に言われて、屋根のあるところに入りました。近くには猿山がありました。
Kちゃんが
「あれ見てよ」
と、言ったのでみんなで猿山を見ました。
すると、猿たちが雨宿りしていました。
ぼくたちと同じだと思いました。みんなも笑いました。
そして帰る時間になったので、集合場所に行って、バスで帰りました。
いかがでしょう、みなさんが添削する側だったら、どのような手直しやアドバイスをされるでしょうか?
なるほど、「ました。」の連発による、レポートっぽさは否めないにせよ、ネタのチョイスはなかなか秀逸です。
この作文の良いところは、それが『動物園に行って帰ってきた話』ではなくて、『雨に降られたぼくたちと猿』という素敵なネタが話の核としてあるところです。
なので、ここはもうワンプッシュ、ネタを全面に押し出すように工夫する必要があります。私が手を加えるとしたら、まずは「雨」、そして、何と言っても「猿たち」の描写でしょう。
この二点にもっとフォーカスして、ちょっと演出が入ってもウソが入ったっていいから、そのディテールを書き込むことで、自然と物語(作文)の流れもよくなるはずです。
例文Ⅱ
ぼくは遠足で動物園に行きました。
動物園に到着したら、急に雨が降ってきました。とにかくすごい雨だったので、先生が
「早く屋根のあるところへ入ってー!」
と、叫ぶように言いました。
ぼくたちが駆け込んだのは、猿山の近くにあった小さな休憩場所でした。
そこでしばらく雨宿りをしていると、Kちゃんが猿山のほうを見ながら、
「ねぇ、ちょっと見てよ!」
と、指をさしました。
みんなでそっちを見てみると、なんと猿たちも、岩山がくぼんだところで雨宿りをしていたのです。 猿たちも困った顔をしてこっちを見ているようだったので、
「ぼくたちと、同じだね」
と言って、みんなで笑ったのが、動物園の一番の思い出でした。
どうでしょう、単なるレポート的なものから、ずっと臨場感のある文章になっている感じがしませんか?
特に、雨のすごさを引き立てるのに一役買っている先生の必死な様子や、「ぼくたち」との相似形である猿たちの「困った顔」が、よいアクセントになっています。
こんな風にもっと対象にフォーカスし(焦点をあて)て、作文という物語の要所をたっぷり語ってやることによって、その作文は自分にしか書けないスペシャルなものへと脱皮してゆくのです。