出会ってこの方、マスクの顔しか知らない子達もあります。
なにせ「ほなみ教室」を妻と一緒に引き継いで以来、この教室の歩みはコロナと共にあったわけなのですから。
近頃はずいぶん、目元の様子からその日の調子であるとか、微笑をたたえているとか、今日はちょいとヤバい日であるとか・・・そんな情報を読み取るスキルが身についたような気がしています。
前にも書いたことではありますが、指導する立場の人間にとって子供の表情は、その理解度や調子を推し量るうえでの貴重な指標なのです。
三年前の四月に教室をリニューアルした際は、けっこう警戒されていたように思います。まあ、考えてもみれば、それも無理もない話で。
私もかつては、自分の通う教室と公文の先生に愛着を持っていたものです。いくら母が教室をはじめると言っても、元の教室を離れることにはひとかたならない未練がありました。
そこへ来て彼らは、教室は同じといえども、先生とスタッフの総入れ替えに直面し、やって来た人間は見ず知らずのマスクの大人。私が子供だったら、けっこうキツいと感じることでしょう。
「何をされるのかしら」「キビシイ人だったらどうしましょう」的な視線をバチバチに感じつつも、こちらは多勢に無勢。採点前ボックスに提出されるプリントを、猛烈に捌きながら、指導しながら・・・オトナがこんな鬼気迫る感じでは、なかなか馴染むのも大変だったでしょうが、よくぞここまで付いて来てくれたものです。
マスクさえなければ、もうちょっと早くうちとけられたのかしら、とも思うけれど「おっ、いま微笑をたたえているな」とか「今日は少し表情が暗いぞ」とか、近頃は肌身に感じてわかることが増えてきました。それは三年という月日を通して培った、マスクの子供達との紐帯なのだと思いたい今日この頃です。
もうしばらく、マスクの子供達とのお付き合いは続きそうですが、互いの表情をイメージしながら、肌理の細かい交流を続けていきたいと思います。