まだ教室も開いていないというのに、急いでひやむぎをかき込んで庭先の自転車に飛び乗る午後一時過ぎ。
教室では先生が縁側の戸を開け放って、ガンガン掃除機をかけている真っ最中で、私が汗ぶったらしながら誇らかに一番乗りの「こんにちは」をするのを「あらま」という顔で見つめる様子。
よい子の皆さんはくれぐれもマネをしないように。先生にだって準備とか段取りがあるのに気がついたのは、いい加減大きくなってからのことでした。
今の私なら「うえっ、なんでこんなに早く来たんだよ?」「一回お家に帰って出直したまえ。」となるところを、「まだ冷えてないけど」と迎えてくれた寛大さには、今なお頭が下がるような思いがします。
掃除機をかけた後の畳に座布団を下ろすのを手伝いながら、いつもの席につくわけですが、ここで間違ってもクーラー直下の席をチョイスしてはなりません。
それはいつぞやの暑い日に、汗ぶったらしてやってきて、そこへ陣取ったはよいけれど、たちまち頭をキンキンに冷やされた挙句、頭痛がしてきてあえなく帰宅したという、ニガイ経験からで。
先生が掃除を終えて、次第にクーラーが効いてきた教室で、ひっそりとお直しをして今日の分の学習に取りかかるのですが、いつもの賑やかさもないガランとした教室は、なんだか薄暗い洞穴のような気さへしたものです。
妙な気後れというのでしょうか、一番乗りをしたは良いものの「やっぱり早く来すぎたんじゃないかしら」「先生もちょっとメイワクだったのじゃないか」という気持ちが、時折心を過ると鉛筆の先も心なしか鈍るというもの。
しばらくしてスタッフの先生がやってきて、ちらほら知った顔が見え始めると、ようやくホッと人心地がついて、にわかに元気づく私なのでありました。
なんて思い出を語っているうちに、早くも夏休みの子供たちがやってきたようです。炎天で待たせるのもなにだし、仕方がない、少し時間には早いけれど入れてあげることにしましょう。