かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

弟子達に与うる記(5) 酒は量より

 諸君が私のもとを巣立っていくにあたって、学問のことと共にどうしても伝えておきたいことがある。でも高校生である諸君にそんなことを教えるわけにはいかないから、これは大学に入って目の前に「お酒」というものがちらつくようになってから読んでもらいたいと思います。

 現代の学生はあまり酒を嗜まないというけれど、「酒の呑み方」を教えてくれる人なんてそうそういないわけだから、よく聞いて心に留めておいてほしい。

 最後はそれぞれ自己流になるものだけど、肝心なのは最初の入り方なのです。諸君は若く肝臓も胃袋も壮健であられることだろうから、はじめはノリと勢いで「おっ、俺って酒、けっこうイケんじゃね?」的な感じでホイホイ杯を重ねてヒドい目に遭うこともあるかも知れません。

 それがヒドい目で終わるのならばまだ良いのですが、本当に下手をすると救急隊のお世話になったり、一世一代の親不孝をする羽目になる。折角学問の場に自分を送り込んでくれた親御さんの恩を踏みにじるようなことをしてはならぬのです。

 では如何にして酒と付き合えばよいのか。

 それは「静かに良い酒を呑む」ことであります。「なんだよ、そんな事を言うためにわざわざ・・・」なんて呆れるなかれ。大事なのはペースと酒の質なのです。

 世の中には「コール」(一気飲み)であるとか、アルコール度数ばかり高くて安い酒といった、悪習や粗悪品が横行しています。酒を呑んで仲間内で盛り上がるのはたいへんに愉快でハッピーなことでありますが、愉しいからといって自分の呑むペースを乱してはなりません(まあ、この年になっても私はたまに失敗しますが・・・)。

 ペースもへったくれもない一気飲みなんてものは、酒呑みの風上にもおけぬ所業。別に陰気にこそこそ呑めと言っているわけじゃなくて、酒は「静かに」歓談しながら味わって呑む。そのためにも量より何より品質の「良い酒」をチョイスしなければなりません。

 私はかつて仙台のおじいさんに「静かに呑め」と教わり、学問の師匠でもある大学の先生に「酒とナントカは量より質」と教わりました。

 それでも沢山の良い酒と、すてきな環境が揃ってしまうと「べ、べつに、まだあんまり呑んでないし」ってな感じで、ヒドい自己欺瞞をし続けた挙げ句、翌朝妻に叱られる羽目になる。結局のところ自分の酒呑みのサガとは一生こんな小競り合いを続けることになるのでしょう(苦笑)。

 だからせめて(?)最初は、自分の許容範囲をちょっとずつ探るところからはじめるに越したことはありません。それが分からないと、いつかトンデモナイ落とし穴に嵌まることだってある。そんでもってステキなオトナにお伺いを立てて「良い酒」の味と呑み方を教えてもらう、これが酒の英才教育というものでありましょう。

 何ですと? そんなヤツがどこに居るのか?

 ここに一人、うってつけの人物がおるではありませぬか。さて次の補講は、立派に学問を語れるようになった君たちに「酒の呑み方」をキョウイクすることに致しましょう。

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