かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆人漫録(12) 壮絶なるDIY

 Do It Yourself.

 「自分でやってみたまえ!」それが、DIYの精神であります。

 そんなことを言うものだから、マジで盆栽園並の配管設備を庭に拵えてしまう愛好家が出てくるというもの。

 徳江さんの棚場に参集した同好会の一同が目にしたのは、庭の隅から隅に張り巡らされた配管と、要所要所に設置された水やり用のホースでした。

 しかもそれは棚と棚の間に一本ずつ塩梅されているので、一〇メーター前後の行きと帰りで片面ずつ水をかけることが出来るようになっています。

 棚の増設とは、愛好家のサガであります。一〇M×五本の棚場の他に、少し離れたサツキ用のひな壇と、玄関先までの露地に並ぶ松柏の棚にも、もれることなく給水設備が整えてあって、要はどの蛇口がどこに対応しているかさへ心得れば、非常に快適な水やりが可能なのでした。

 私は常々、愛好家のDIY精神に心を打たれたり、自分もまたあり合わせの道具を使って雑誌の真似事をする身ではありますが、徳江さんのDIY魂には心を打たれっぱなしのボッコボコ。

 徳江さんはいつも謙遜しているけれど、私が先輩から譲り受けた棚板ときたら、半分朽ちてしまってそこから青草が萌え出でる体たらく。そもそもそんなアルミの足場みたいな資材をどこからどうやって調達してくるのやら、どうやってパイプをひな壇に組み上げるのやら、私はまだまだその足元にも及ばないというわけで。

 そんなリスペクトすべき徳江さんの棚場には、秋が訪れていました。生け垣を剪定した際にもったいなくて挿したという「ベニカナメ(レッドロビン)」、京の都から種を拾ってきたという紅葉が真っ赤に色づいて主を待っている。

 壮観と言うべきDIYの庭にて、同好会の皆も私もその大切な愛樹たちに水を遣りやり、いつも会の中心にあった徳江さんの張りのある声をいつになく恋しく思ったのでありました。
 
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