私が通っていた教室では年に二回、夏休みと冬休み前の教室日にお菓子がもらえる日がありました。
別にとりたてて「会」と名の付くことはしていませんでしたが、ほかに呼びようがあまり思いつかないので、とりあえず「お楽しみ会」と呼んでいました。
その日の学習は今ではあまり聞かなくなった「集中学習」というやつで、私は結構好きでしたが他の皆さんはどうだったか知れません。
自分の進度よりずっと下の算数教材を、三十枚も五十枚も一気呵成に解ききるというのが、その名の如く「集中学習」。普段鍛えた計算の力をフルに発揮して、素晴らしい速度で枚数をこなして積んでいく快感はなかなかのものでした。
計算力の限界に挑戦というより、実際問題これは最終的に手の早さがものを言います。頭では瞬時に答えが出ているけれど、猛烈なスピードで走らされている手の方が遅れてくるのです。
確か時間制限があったのだと思いますが、それこそ時間内は「わんこそば」方式で次々とプリントが追加される仕組みなので、最後の方は鉛筆を握る手が疲れて大変なことになる。なんだかんだで体育会系的なイベントなのでありました。
そんなものだから、やりきった感は半端ないわけで、頭と手はたいへんに火照って、普段の学習よりもよっぽど頭を使った感がありました。脳科学者の川島教授曰く、単純な計算問題をこんな風にして解いた時の方が、脳は活性化するのだとか。
そうして帰り際に進呈されるのがお菓子の袋。これが素敵に嬉しかったのは、やはり脳がいつも以上に活性化していたためなのでしょうか。
「キャベツ太郎」から食べるか「コーンポタージュ」か、そして「うまい棒」は何味か、「モロッコヨーグル」と「蒲焼きさん太郎」はちゃんと入っているか・・・百円やそこらの詰め合わせでも十分にハッピーな気分を味わったものでした。
これが私が記憶しているいにしへのお楽しみ会であります。しかしながら、このお楽しみ会の様相が一変する境目がもう直ぐそこまで近づいていることを、私は知るよしもなかったのでした。(つづく)