かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆人漫録(14) 構ってちゃん登場

 もちろん展示を見に来てくださるのは、盆栽愛好家の方々ばかりではありません。そんな方々にこそ盆栽の面白みを発見してほしい、と展示会をやっているわけなのですが、やっぱりどうして、困ったお客さんというのもあります。

 エー、そんな中には随分とエバったお方もありますようで・・・

 「ねぇ、君、君だよ君。」「へぇ、私ですか?」「そうだよ、君しかいないだろう。他に客があるってのかね?」「はぁ、それで、どうかされましたか?」「うむ、でも君じゃないんだよ」「あべこべですね。」「この会にはあべこべじゃなくて、先生ってもんがいるのだろう? ぼくは君じゃなくて先生に質問したいんだよ。」

 ってな感じで、実に店番をしている一愛好家の血圧を朝イチで上げに来る不逞の輩もあります。こんなタイプの方は話をさせてみると、およそこんなことを言われます。

 「うちの庭にサツキがあるんだが、太い枝に元気がなくなって、裂けたり皮が剥けてきたりしているんだ。これはどうやったら治るか、君らの先生に尋ねたいんだが、先生は今日いないのか?」「お客さん、そいつは残念ながら、枯れていますよ。サツキは庭のどこに置かれてますか?」「どこだって? 庭だもの外に決まってるよ。」「だから、外は外でもそこは霜があたったり、陽当たりが悪かったりしませんか?」「え? そんなことを君が聞いてどうしようっていうんだ? ドロボーにでも入る気だろ?」

 と、およそお話にならないので物別れになるのが常なのでありますが、そんな人に限って一度出て行ったのに、また戻ってきて居座ったりするから、たいへんにタチが悪いもので。

 「時に、君たちの会には何人在籍しているんだい?」「十二、三人ほどですが。」「なんだ、そんなもんか。」「月に何回くらい?」「二回です。」「へぇ、そんなもんか。」「(ゴホン)」「ふむ、そんなもんか。」「まだ何も言ってませんけど。」「お客をからかうんじゃない!」

 つまるところこの人は、別に来る気もないのだけど「来ませんか?」と言って欲しいのです。けれど私は先ほどの事があって大いにムカついているから、死んでもそんなことは言わない。だけど、店番交代の時間が重なってやってきた会員の方が不用意に「来ませんか?」というキラーフレーズを言っちゃったものだから、アチャー、と思って聞いていると、

 「イヤだよ。ぼくはそんなにヒマじゃないんだ。」とやっぱりカウンターの憎まれ口が飛んできて、居合わせた一同うんざり。全くもって迷惑な「構ってちゃん」であります。

 こんな時は自分たちが飾った樹でも眺めて、リフレッシュするにしくはありません。なにせ樹は自分から構ってアピールをすることもなければ、出会う人をイラつかせるようなこともしないのですから。

 今シーズンも、あの人がまたやって来たなと思いつつ、来る客は拒まず。それが盆栽文化の発展に数ミリでも寄与するのならばお安いもんだと私は思うのです。(でも、やっぱりムカつくものはムカつきますが笑)