よくある塾の触れ込みに「勉強と部活の両立をサポートします!」というのがあります。
地方へ行けばいくほど、そんなニーズが高まるように思うのは、この地に学び舎を営んでいる私だけでしょうか?
なるほど勉強と部活動の両立は、普通の公立中高に通う学生にとって、この上なく素敵な誘い文句でありましょう。
部活動も頑張って、勉強も頑張って自分の志望する偏差値高めな進学先に合格する。果たして、そんな願ったり叶ったりって、実際にあるのでしょうか。
私が思うに、そうした両立が実現するのは限られた成績上位層に過ぎません。
偏差値が五〇をオーバーする公立高校が、なんと一校しか存在しないこの地域では、どんぐりの背比べをする大半の生徒が、偏差値五〇以下の高校へ進学していきます。
偏差値五〇を大半の生徒が越えられないということは、結局のところ基礎学力が欠乏したまま、この地域の子供達が進学先を選んでいることを如実に物語っています。
平日も毎日夜遅くまで部活動に励み、土日も返上しての練習試合。酷いのになると部活動の後にそのままスポーツ少年団の練習へとスライドするところだってあります。
慢性的に基礎学力を欠乏させた彼らは、いつどこでそれを補うのでしょうか?
こうした生徒、つまりはこの地域の大半の中高生に「勉強と部活の両立」は、どだい不可能なのであります。可哀想なのは、自分の意思に反して部活動に貴重な時間を簒奪される生徒が一定数存在することです。
部活動への強制加入制などという時代錯誤な校則は、多様性が尊重されるべき時代にあって、およそ褒めるべきところがありません。やりたい生徒が自己責任で部活動に勤しむ、というのが真っ当な考え方であって、これを強制した時点でそれはスポーツや文化に対する冒涜にしかならないのです。
「勉強と部活動の両立をサポートします!」
とてもじゃないけれど、私はそんな無責任なこと、口が裂けても言えません。