かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

定点観測(38) 筆算が捗る男

 苦節四ヶ月。教室がコロナ騒ぎで休みになっている間に「かけ算を忘れた男」が、ようやくかけ算の筆算に進んだ。

 思いの外、復習に時間を要したのは、外ならぬ彼が宿題をほとんどして来ないためであるが、教室に来る度、かけ算のプリントとかけ算の表を諳んじるテストをビシバシやらされる。

 すると興味深いことが分かってきた。4の段と7の段になると、プリントと暗唱の速力がぐんと落ちるのである。

 最初は単に苦手なだけではないか、と楽観していたもののやっぱりどうして上達しない。暗唱だって何回も不合格で返されているようだから、注意して彼の暗唱テストを聞いてみたところ、その原因が分かったような気がした。

 実に舌を噛みそうな発音で「し」と「しち」と格闘している。だから「ししち28」なんて苦悶の表情をしているものだから、見かねたスタッフが「もっとゆっくり」と声をかけてもなお苦行が続く。

 しているうちに今度は、自分でも「し」だか「しち」だか混乱してきて、終いには「よんしち」とか「しーし」になっている。根がせっかちなこともあるのだが、どうにもこれはオカシイ。 試みにかけ算カードを音読させてみると、やっぱりたどたどしい。つまるところ彼は音で覚えるべき九九と、プリントで解き進めてきた九九とがうまくリンクしていなかったのである。

 子供に限ったことではないかも知れないが「つまづき」の原因はそれぞれ。端から見て「何だそんなこと」と思うようなところにあるのだ。

 だけれど、それは当人にとっては退っ引きならない大問題であって、その大岩を迂回しないことには、どうにもその先の展望が見えて来ないのである。

 さて現在彼はかけ算でとった遅れを取り戻すように、その筆算をわしわし解いている。いやはや捗る捗る。ぶつぶつ九九を口の中で唱えつつ、あの「つまづき」がウソみたいである。

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