かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆・歳時記 樹形篇(四)

○双幹

 ツインタワー的なものを想像される方もあるかも知れないが、そんなキングギドラみたいな樹もちょっと見てみたい気もする。

 親の幹と子の幹と、それぞれ独立した樹芯が一本の樹のほのぼのとした輪郭を形作る。

 「なぁ父ちゃん、おいらもその位の背丈がほしいなぁ」「よせやい、お前ぇがぐんぐん伸びた日にゃ、父ちゃんもお前ぇもオマンマ食い上げだぜ?」「大丈夫。その頃にゃ父ちゃんもいい加減ガレちゃって舎利になってるか、おいらの子幹になってるさね。」
  
○石付き

 石を抱く、と申しても江戸の昔の拷問じゃあない。

 根が、幹が石を抱いて一体化した姿は、自然の厳しさと柔軟さとを同時に感じさせる。

 とはいえ、運ぶのに並大抵じゃない苦労をせねばならぬのも、石付きの特徴である。

 だって石なのだもの。そりゃあ重いに決まっている。十号を軽く超える鉢に土と石と太い幹。そんなのが準備中の展示会場に運ばれて来たら・・・。

 アレ? どうもさっきから照明の調子がオカシイなぁ、ちょっと脚立でも取って来ようかしら・・・。

○変わり樹

 いずれの型にも嵌まらない。これぞゴーイングマイ・ウェイである。そんなヤツは概してクセが強めで、気が合わなけりゃとことん折り合えない星回りにあるらしい。

 欠点ばかりあげつらってもキリがない。うまく付き合うコツは、その強すぎる個性を認めて、そいつをグイグイ引き出してやることなのだ。

 わが学び舎の弟子も、わが棚場の樹も、そんなヤツとの思い出ほど忘れがたいものはない。