○双幹
ツインタワー的なものを想像される方もあるかも知れないが、そんなキングギドラみたいな樹もちょっと見てみたい気もする。
親の幹と子の幹と、それぞれ独立した樹芯が一本の樹のほのぼのとした輪郭を形作る。
「なぁ父ちゃん、おいらもその位の背丈がほしいなぁ」「よせやい、お前ぇがぐんぐん伸びた日にゃ、父ちゃんもお前ぇもオマンマ食い上げだぜ?」「大丈夫。その頃にゃ父ちゃんもいい加減ガレちゃって舎利になってるか、おいらの子幹になってるさね。」
○石付き
石を抱く、と申しても江戸の昔の拷問じゃあない。
根が、幹が石を抱いて一体化した姿は、自然の厳しさと柔軟さとを同時に感じさせる。
とはいえ、運ぶのに並大抵じゃない苦労をせねばならぬのも、石付きの特徴である。
だって石なのだもの。そりゃあ重いに決まっている。十号を軽く超える鉢に土と石と太い幹。そんなのが準備中の展示会場に運ばれて来たら・・・。
アレ? どうもさっきから照明の調子がオカシイなぁ、ちょっと脚立でも取って来ようかしら・・・。
○変わり樹
いずれの型にも嵌まらない。これぞゴーイング・マイ・ウェイである。そんなヤツは概してクセが強めで、気が合わなけりゃとことん折り合えない星回りにあるらしい。
欠点ばかりあげつらってもキリがない。うまく付き合うコツは、その強すぎる個性を認めて、そいつをグイグイ引き出してやることなのだ。
わが学び舎の弟子も、わが棚場の樹も、そんなヤツとの思い出ほど忘れがたいものはない。