かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

定点観測(39) とはずがたり

 さっきまで黙ってお勉強に集中していた子が、帰る間際になって語り出す。

 一心に動かしていた鉛筆をピタっと止めて「あ、そう言えばさぁ」と、語りかけられることがある。 そんな感じで彼らが問わず語りに喋り出すのは、気持ちが上向くときと決まっている。

 本日の学習が終わった解放感もあろうし、初出のプリントに目を通して「けっこう、イケそうだぞ」という手応えを感じたりした折りなど、ちょっと高揚した気分が、彼らをして何をか語らせるのだろう。

 オトナたちが教室をパンクさせまいとテンテコマイになっている時に限って「今日学校でさぁ、絵の具使ったんだよね」とか「昨日、仙台行った。」「明日プリキュアみにいく。」と実に唐突にぶっ込んでくるものだから、なかなかどうしてリアクションに困る。

 どれも「ああ、そうかい」「ほう、そんなことがあったのかい」「よかったなぁ」くらいにしてあまり話の展開は見込めない単発話であるが、語り終えた彼らはたいそう満足そうな顔をしている。

 われわれのめざましいリアクションを期待しているというよりかは寧ろ、そうやって語ること自体に目的があるのだろう。

 されどそんな取り留めもない日々の報告の端々には、彼らの幸福な気分がほの見える。

 これから彼らは家族の待つ家に帰って「ぽかぽかごはん」を食べて「あったかいふとんで眠るんだろな」と思うと、ふと私も「おうちへかえろ」なんて気分に誘われて、ついと仕事を終えたくなっていたりするから困る。
 
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