盆栽の鑑賞について、何かマニュアル的なものを語ってみようと思ったのですが、そんなケンイ的なものをしゃちこ張って云々申したところで、寧ろ胡散臭い感じがします。
確かに絵画の世界ですと、感性に従って観るのにはどうしても限界があって、時代的考察やモチーフに隠された象徴的な意味や、暗号を繙いていくことによって「鑑賞」という行為が一層深みを増すことでありましょう。
では、盆栽ではどうでしょうか。確かに、根の張り方、幹の立ち上がり、流れ、枝々のバランス、樹形等、鑑賞する際のポイントはいくつかありますが、あくまでそれは愛好家目線の観点であることを考慮に入れておく必要があるのではないでしょうか。
初めて盆栽というものを観たり、触れたりする時、われわれはどのように「鉢の中に生きる樹」にアクセスしていけばよいのでしょうか。
絵画のように距離を置いて、その立ち姿を鑑賞するのもよいでしょうし、雄々しく立ち上がる幹に「うわっ、ふとっ!」という感慨をつい口の端からこぼしてしまうのも、大いにアリでしょう。
私のオススメは「目線を下げてみる」こと。ちょいとばかし腰に頑張ってもらわねばならないかも知れませんが、鉢の上端から幹の立ち上がりくらいに目線を持っていってみてください。
するとどうでしょう、自分がその樹の下に立って見上げているような気がして来ませんか?
私はいつも樹をつくる時、まず「この下に寝転んでみたい」という樹を思い浮かべることにしています。ちょっと寝転ぶのが難しそうな樹もありますが(笑)、やはりその樹のふところに立った景色をイメージすることが、サイズ関係なく大事になってくるような気がするのです。
さて、みなさんはどの樹の下に寝転んでみたいと思いますか? 風のそよぎ、葉末のささやきを聞きながら、青い空をぼんやり眺めるに相応しいお気に入りの一樹は見つかったでしょうか?
え? なかなか見つからないですって? だったらあなたも、ひとつご一緒に、気に入る樹を作ってみるなんてのはいかがですか?
何でもここだけの話、一献傾けながら鑑賞する自分の樹というものは、いつになく好いものですヨ。