かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

子宝日記(2) つわりの話

 男になむ生まれついた私は、女性が毎月のように苦しむ「生理」が如何に痛くてツラいものか、「つわり」が如何に苦しいものか、頭では理解しているつもりであるけれど、やはり正直なところよく分からない。いや、分かれないのである。

 だったら無関心でいればよいではないか、というわけにはいかないのが現代という時代である。「生理」についての話は、折りにふれて妻にインタビューしたり、彼女に買い与えられた『生理ちゃん』なる漫画を拝読するなどして、中学生の保健体育以上の知識を蓄えたつもりであった。

 しかしこの度の「つわり」に関しては、私も妻もドラマの定番シーン以上のイメージを持ち合わせていなかったわけである。

 しゃもじでご飯をよそうヒロインが、突拍子もなく流し台へ走って行く。驚くお茶の間の一同。姑がニヤリとするアップから、シーンが切り替わって診察室。ムズカシイ顔した医者が、ニコッと笑って「おめでたです」の定番の流れ。これではあまりに断片的で抽象的である。

 「つわり」らしきものがはじまりかけた頃、早速、情報収集を始める。「つわり」は母に似るらしいというので電話で聞いてみたり、私の母や祖母にも話を聞いた。

 どちらの母親も「別に・・・」という話で実に拍子抜けした一方、私の祖母はほとんど口にものが入れられないくらい苦労したらしい。体験談が見事に二極化した結果、あまり参考にはならなかったし、「つわりが母に似る」説の信憑性も疑われるところとなった。

 幸いにして、妻の「つわり」は空腹時のムカムカと、焼き魚やイカ、にんにくなど、匂いの独特なものが数点食べられなくなるくらいで済んだ。

 さはれ、そのムカムカがどれほどのものであるのか、これを存知しないのも現代の男として好もしくない。どんな気持ち悪さであるのか、様々ヒアリングを行った結果、私がもっともピンと来たイメージは「二日酔い」であった。

 眉根をひそめて「それは、マジで大変だろう」と、はじめて実感をこめてその苦しみを理解した夫は、しずしずと中華粥を煮始めたのであった。