かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

定点観測(42) 目指せ、重々しい男

 『源氏』の「宇治十帖」の主人公である薫大将は、重苦しい感じの男として知られている。

 しかし、ここにたいへん「軽々しい男」がある。

 今日もヘンな間違いをしてからに、私から「お前さんねぇ・・・」と小言をいわれても、そこはオキマリの「ハイハーイ」である。

 だからこちらも「ハイは一回でよろしい(笑)」というオキマリの文句で返す。今の訂正で今日の学習が終了するとあって、何だかニコニコしながらまだそこに突っ立っているので、ちょいとばかしオトナのアドバイスをしてやることにする。

 「お前さん、そんな『ハイハーイ』なんて言ってると、軽い男だと思われるぜ?」

 やはり伝わってないだろうナ、と顔を見ると意外にも満更でなさそうな顔して曰く、

 「そうだよね、男の子だから、軽いオトコってかっこ悪いよね。」という意外な返しであるから少し驚いた。「軽い男」というものが、どんな感じなのだか分かっているのだろうか。

 「では軽くない男って、どんな感じだ?」
 「うーん、軽くないからさぁ、重い感じ?」

 彼はこれから「重い男」を目指すらしいが、とりあえず面白いから「頑張ってくれたまえ」と励ましたところ、やはり「ハイハーイ!」で返された。思わず私も「軽っ!」と言葉が漏れた。

 「重い男」への道のりはまだまだ遠いらしいが、彼特有の「軽み」も決して悪いものではない。いつもあっけらかんとして、時々えらく悄気ることがあっても、次の教室にはケロッとリセットされてやってくる。

 私はそんな彼の「軽み」が結構好きなのである。