かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

弟子達に与うる記(16) ゆかしい方へ

 興味がないものを研究の対象に選んだところで、そんなものが研究になるわけがないのです。自分が「ゆかしい」と思えるからこそ、研究が出来るのです。

 世の中には「大学を出ること」だけが目的のような人間もいますが、それはどこまで行っても学問と主体的に関わることのない「お客様」に過ぎません。

 さぁ、みなさん、お手元のカタログをよぉく熟読して、何なら体験などしちゃったりしながら、自分にぴったりの学問を選ぶところから始めてみようではありませんか。

 同じ文系の専門分野といえども、その裾野はべらぼうに広くて、当時の私は「近代文学研究」一本槍。一応教育学部という所属ではありましたが、ここだけの話、「国語教育」にはほとんど目もくれず、単位と「いざという時の食い扶持」として教員免許が取れればいいや、くらいに思っていた次第でありました。

 さはれ「国語教育」は腐れ縁のように私につきまとい、今では週に二、三本、それ系の記事を書く羽目になり・・・いやはや人生、分からないものです(笑)。

 ここまで極端にやる必要はありませんが、みなさんには、まず第一に自分が「ゆかしい」と思う専門分野を見つけることをしてほしいと思います。

 学生の軸はやはり学問をおいて外にありません。自分が極めたい学問にしっかり軸足を置くことが出来れば、そこをベース・キャンプとして他の領域に出かけていくことも可能でしょう。

 その出かける先は、他の学問領域でもいいし、趣味でもサークル活動でも、何なら恋愛だってよいでしょう。

 大事なのは「ゆかしい」と思ったらとことん掘り下げ、掘り進むことなのです。今そんなことをやっても全く意味が無いように思えても、いつかそうやって掘り進んだトンネルが思いがけず、学問や他の「ゆかしい」ことにぶち抜けることだってあるのです。

 自分の選んだ「ゆかしい」ことが、それぞれ全然違うベクトルを持つものであったとしても構わない。構わないからやり続けていれば、それがいつか知らないうちに自分の中でリンクしてくる。

 それこそが、外の誰とも替えがきかない人間の個性、多様性を生み出してゆくのかも知れません。とりあえず迷ったら、ゆかしい方へ。

 ゆかしいことを継続してやり続けられるのは、大学生の特権であります。諸君、よろしく励み給え。