かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

定点観測(43) 抽象的で具体的な会話

 カレンダー少年をはじめ、公文の算数を進めてきた子供達と数式を追いかけていると、段々会話が抽象的になっていく。

 例えば分数が入った四則混合。

 カッコの中を先に計算しながら、他の項において同時進行で通分の準備をしたり、約分のために仮分数に直しておいたり、様々な段取りをこなす中で、プリントに対峙した子供と私が抽象的なやりとりをはじめる。

 「ここのカッコ先にやんなきゃ。」「ああ、次のターンで通分してもいいんじゃね?」「でもさ、ここのカッコ分母24になるから」「やっとく? さすがだねぇ。」「で、あと上がおっきくなるから、答えは一と・・・」「はいはい、あと二手だな。」「ほんとだ、多分約分することになるけど、答えは1と8分の3じゃん。」「そうなるな。」

 と、この会話はカレンダー少年が問題に着手する前の会話なのである。初めての教材と問題を前にして、その終いまでの段取りを、こうしてオトナと真剣に検討する小学一年生が外にあるだろうか。

 よく将棋指しが本局の後に「感想戦」というのをやるが、これはまさにそんな感じ。一つの問題に向き合う人間同士が、互いの思考を言葉に乗せてキャッチボールしあう営みなのである。

 それは端から見たら、実に抽象的な会話であるけれど、当人たちの頭の中では実に具体的な内容のやり取りが行われているのだ。

 こんな感じのチャンネルが開けるように育てば、あとはもう大丈夫。私なんぞいなくたって勝手に育つというものだけど、そんな光るものを持っている子供を見ているのは面白いから、やっぱりそんな検討会にのこのこ顔を出してしまう。

katatumurinoblog.hatenablog.com
 
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