チラッと見たら、椅子にふんぞり返っているヤツがある。
なぜあいつは、あんなにふんぞりかえっているんだ。とガンを飛ばす手前もまた、椅子にふんぞり返って腕組みなんかしているのは、あいつの椅子にも私の椅子にも立派な「背もたれ」がついたためにほかならない。
ではどうして、背もたれがついたかと言えば、それは引っ越したからである。前の教室が「タナダテ」にあって教材棚もろとも引っ越した先の集会所の椅子に、なんと背もたれがあったのである。子供にはちとゼイタクな気もするけれど、あるんだからしようがない。
でもそこまでケツを滑らして、机の上にアゴだけ出すのは、流石に止してくれないものだろうか。というか、もう半分溶けちゃっているし、さっき入って来た時のカチコチのド緊張はどこに行ったというのかしらん。
慣れ親しんだ教室を離れ、オトナも子供も新しい教室へまかり越したる第一日目。そりゃ疲れるし、私だってまだ日暮れ前というにヘトヘトである。なんならこのまま、ケツをずりずりスライドさせて机の下にフェードアウトしてしまいたい気分である。
緊張が程よいスパイスになって、いつも以上にスムーズに学習した新しもの好きもあったけれど、やっぱり私を含めて大半の子供たちは、なんだか「しっくりこない」ようである。いつもはしないヘンテコなミスを連発してみたり、ぼけっと窓の外を眺めてみたり、まだまだこの新しい空間にフィットしていないのだ。
好い塩梅になるまで、緊張と弛緩がほどよいバランスになるまで。今しばらくの辛抱である。
さて諸君、ここはひとつ人間の〈身体〉の可能性を信じようではないか。