かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆人漫録(22) 空城の計?

 かつて諸葛孔明は、空にした城の楼上に琴を弾き、詰めかけた敵軍をまんまと欺いたそうな。

 盆栽愛好家なら知っている専門誌『近代盆栽』には、毎号必ず全国各地の展示会情報が掲載されています。これを頼りに、われわれ愛好家はまだ見ぬ樹と同好の士との出会いを求めて、西へ東へ奔走するわけなのですが、つい先日、われら同好会一同、見事にいっぱい食わされた次第で。

 秋の展示会を終えて、ふぅっと気が抜けた例会の席上、『近盆』を持参した吉原さんが「鳴子で交換会あるらしいから、どう?」と言うので、触手が動いた一同、「じゃあ、行ってみようかナ」で、ほぼ全会一致。

 研修旅行にも出られなんだ折から、皆で揃って盆栽を見たり買ったりしに行くということもなかった三年間でありましたので、そこはやっぱりマグマがふつふつ滾っている感じ。

 今年惜しくも引退された梅田さんが、折にふれて「交換会はイイゾ」と言っていたのが思い出され、私もなかなかどうして満更ではありません。

 秋も深まった先週末は、雲一つ無い快晴でありました。この空の下、ワンチャン残っているかも知れない紅葉など眺めつつ、前々から欲しいなぁと心にかけていた「あんな樹」や「こんな樹」を譲り受けられたりしたら、実にハッピーであろう。

 そんなおめでたい気分で、新会員の大場氏が運転するワゴンに乗り合って、市役所の駐車場を出発した一同なのでした。大場氏選曲の昭和歌謡メドレーと、前列、中列それぞれで繰り広げられるトークを多重放送的に聴きながら、一時間弱で会場付近に到達。

 しかし、何かがオカシイのです。私のイメージでは『近盆』を見て集った愛好家たちの車が、ひなびた温泉街の外れにズラーッと並んでいるはずだったのですが、そんなもの一向に見当たりません。アレ? アレ? と各々首を傾げつつ、会場まで到着してしまったけれど、われわれを待っていたのは、人気の絶えた駐車場…。(次回へ続く)