かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

定点観測(46) Kちゃんの解答欄

 傾きかけた日足が、小春日の教室の窓からいっぱいに差し込んで、大人も子供もついつい仕事と勉強の手を止めて、大きな伸びでもしたくなる。

 今日は一番後ろの席に腰掛けたKちゃんも、他にまだ生徒がいないのを幸い、マスクをあごの辺りまでずり下げて、とろんとした表情で寛いでいる。

 あんまりそこで寛がれても困るのだけれど、久し振りにみるマスクの下の顔は、少しばかりお姉さんっぽさが出てきたけれど、まだまだあどけない感じである。

 昼飯の満腹感が追っかけて、あすこまで立っていくのも億劫であるから、文字通り目にものを言わせて「ハヤクヤレ」と発信したところ、にっこり可愛らしい微笑みが返ってきた。

 今日はいつもよりお疲れのご様子。引き算をしながらお花畑を描いたり、ともすると再び寛ぎの午後を満喫したりするから、何とか妻と交互に応援しながら算数を終え、国語の学習に入る。

 国語には定評のあるKちゃんである。

 プリントに書かれたことを、きちんと全て音読しながら問題に取りかかっている。しているうちに調子が出てきたらしく、一人でどんどん解きすすめるから安心していたところ、通りすがりざまにスゴイものを見てしまった。

 スルーしようかな、とも思ったけれど、こいつはそうもいかない。

 本文から答えを抜き出して書く解答欄のマス目が、明らかに増えていたのだ。本人は多分半分マジメで、半分マジメではない。

 どうしても答えが入らないから、自分で工夫してマス目を増設したのだろうが、答えを読んでみると「目め、をあけまし。」の「。」を潰して空欄を作り、そこに堂々と「た」を上書きしているではないか。

 実に大胆な作戦であるが、ここでKちゃん、あえなく御用。自分の答えを読ませると「エヘヘ、お『目め』だってぇ」と無邪気に笑っている。

 自分の書いたヘンな答えを笑えるようになっただけ、そして私たちをアッと驚かす奇策を弄しうるだけ、Kちゃんは成長したということなのだろう。

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