かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆人漫録(25) ニューフェイス

 今はどうしているのやら。

 彗星の如く盆栽同好会に入会してきた大型新人。その肩書きは「植木屋さん」とあって、トレードマークのサングラスを、一同畏敬の念をもって眺めたものでありました。

 聞けば盆栽もお持ちのようで、樹を知り尽くした本職が育てる盆樹とはどんなものであろうか、と尽きせぬ興味。先生がデモンストレーションする様子を、腕組みして見入る姿はさながら「頭領」的な風情。めっちゃガン見しているにも拘らず、一向に言葉を発さないものだから、今考えると先生もさぞかしやりづらかったことでありましょう。

 そんなことだから、先生をはじめ、誰もが「植木屋さん」の樹を見たい! とゆかしさを募らせるのは最早当然の成り行きというもの。さて、次の展示会にはいったいどんな樹が持ち込まれるものかと期待が膨らみました。

 何でも「真柏」をお持ちだそうで、それも石に付けて「景色を付けてある」とのこと。こいつは是非とも展示会の目立つところに飾って、お客さんをアッと言わせたいところ。

 されど展示会準備に「植木屋さん」の姿がありません。ハテ、真打ちはどうしたものかと待っていると、庭の仕事が入ったので明日の開館前に展示するとのこと。さてもさても、ドラマティックに、われわれの「見たい!」をギリギリまで引っ張るとは「植木屋さん」、やはりただ者ではありません。

 よし、ここは一つ入ってきたお客さんの目に真っ先に飛び込むところの展示スペースを「植木屋さん」のために空けておこうではないか。一同、未だ見ぬ「真柏」を思い思い心に描きながら、展示会の幕が上がるのでした。