かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

子宝日記(8) 子を連れて

 けっこう冷静に考えた。冷静に考えた結果、この時期に性別が分かるということは、生えているものが生えていた可能性が高い。長い沈黙のドライブの後、意を決して「男じゃないか?」と、あくまで当てずっぽう感を出しつつ答えを出すと、私の葛藤を知ってか知らずか「オッ、正解。」と実に軽い感じで妻が発表してきた。

 正直なところ、私はどちらが生まれても良かったのであり、それぞれに愉しみがあって、それぞれに苦労もあるだろうことは分かりきっている。強いて言うなれば、私の子供にも男子のサガが具わって、それをめぐってこの子もいずれ何だかんだの懊悩をする羽目になるのだろうと思うと、ちょっとした哀しみのようなものを覚えたけれど、それもまた人として生をうけることの味わいの一つなのやも知れない。

 桃の節句が予定日であったことから、こいつはきっと女の子だろうとふんでいたのだが、私に半分似ている野郎がやってくると決まると、まだ十二分にイメージが湧かない。

 湧かないままに、いつものスーパーに到着して入店する。私はいつもワープロが入って膨れたカバンを置くために、子供をのせる椅子がついたカートを選ぶ。今まではカバン置きにしか思っていなかったここのところに、遅かれ早かれ私はマイ・サンをのっけることになるのだ。

 それは何だか珍妙なことのように思われて、少しく吹き出してしまう。どんな顔をしてヤツはこのカートに搭乗してスーパーの景色を眺めるのだろうか。あれが食いたいとか、お菓子コーナーへ連れて行けとか、きっとよしなしごとを並べて足をぶらんぶらんさせたり、時には抗議の意味で靴を飛ばしたりなんて事もしやがるかもしれない。

 いやはや油断ならない野郎である。さはれ、わが子には「男子厨房に入れ」を、言葉ではなくて教えるつもりである。

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