かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆栽教育論(1) 序

 互いにベクトルの違う「ゆかしいもの」は、いつかどこかの地点において不意に落ち合うのではないか、というのが私のぼんやりとした実感であります。

 たとえ性質の異なる別個の趣味であれ、学問であれ、雑多な読書であれ、それを一個の人間が「ゆかしい」「なぜかしらん無性にそそられる」と思うものを突き詰めたり、ひたすらに継続して掘り下げ続けると、いつかその軌跡と軌跡とが交わって、不思議なコラボを実現することがあるのではないか、と私は常々思うのです。

 「盆栽」と「教育」。

 一つは私が何となく始めた趣味であり、一つは私が世を渡るにあたっての稼業としているところのものであります。

 どちらの領域とも、付き合いがはじまってこの方十年以上が経過しているわけですが、ある時からこの二つのものが、えらく相似形をなしていることに気がついたのです。

 そのことに気づいた時、私は正直、ただ何となく興味をそそられてはじめた趣味の領域に、仕事のナニが浸食してきたようで、結局の所自分はずっと「教育」というものにかかずらっているのではないか、と辟易したのを覚えています。

 しかしながら、それは寧ろ逆であり「盆栽」を通して「教育」を眺める視点がここに生じたことは、私にとって「教育」とは何かを考え直す新鮮で重要な契機を与えてくれたように思います。

 おかげで、今となっては生徒の一人一人が、素焼きの鉢に入った若木に見える・・・と言うと、かなりヤバイ混淆のようにも聞こえますが、私なりの「盆栽」と「教育」のアレンジメントの一端を読者諸氏にご紹介しつつ、教育において変わらないものと、教育のこれからを考えて参りたいと思っております。