かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

教育雑記帳(43) レッテルを貼りますか? 前編

 自分の子供が「ちょっと周りに合わせられないようだ」「自分の手にはどうにも余ってしまう」という焦燥に駆られた親が、思い詰めた末にやってしまうのが「レッテル貼り」という現象であります。

 どんな「レッテル」を貼るかと言えば、すぐさま大きな病院のさる筋で有名な先生のところへ連れて行って「発達障害」のレッテルを貼ってもらう。一回で診断がつかなかったら、何回も連れて行って何かしらの病名を頂戴して来るわけですが、さらに酷いのは、それを理由に子供の教育を断念する親であります。

 「ずっと学校の先生に言われていて、この間病院に連れて行ったら、発達障害と言われたので教室もやめさせていただきます。」というお断りの文言を、私は何度か耳にしています。これまで教室では他の子と変わりなく、自分のレベルに見合った学習をきちんとこなしていた子が、「発達障害」を理由に、ある日突然教室を去って行くのははなはだショッキングな出来事であり、そこに猛烈な理不尽を感じてしまいます。

 確かに、どうしても集団生活になじめなかったり、学年相当の学習について行けない子供に、何かしらの診断がつくことは仕方のないことであります。しかしながら「発達障害」と診断がつくことは、学習をあきらめることと同義なわけがないのです。寧ろ、そうした診断をもらうということは、「その子に相応しい支援をはじめましょう」というきっかけに過ぎないのです。

 そこを取り違えてしまう親が、つまりは「レッテル」だけ欲しい親が一定数存在していて、診断が下った日をきっかけに、きれいさっぱり教育をあきらめる無理解に対して、私は憤りと危機感を覚えるのです。