かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

盆栽教育論(7) 実生苗と幼児教育Ⅱ

○大きくなってからでは・・・

 剪った曲げたは盆栽の常であり、時には大胆に鉄棒なんかをあてがって大がかりな改作などが行われるわけですが、やはり「立ち上がり」となるとそうはいきません。

 樹が最もよく太って硬くなる部分である「立ち上がり」は二年、三年もすれば立派に肥大化し、とてもではないが曲げられない状態になります。まだ細みのある枝や、その枝先はいくらでも針金による矯正が効くのですが、ここばかりはなかなかどうして「後から手を加える」ということが出来ないのです。

 だからこそ「立ち上がり」の如何は、その盆栽の将来的価値を決めてしまうと言っても過言ではないのです。いくら名人が腕をふるっても、「惜しいなぁ、やっぱりここがネックなんだよなぁ・・・。」とミソが付いてしまうように、殊に立ち上がりの棒伸び(直線的な幹筋)は、その樹が然るべき段階を経てこなかったことを如実に物語ってしまいます。

 必要なのは「先に手を加える」こと。言葉の通り「枝葉末節」は、ちょっと乱暴ですが、後からどうにでもなってしまうのです。枝葉末節にばかり拘っても、肝心の本の部分が疎かであれば、その価値はたかが知れてしまうというもの。

 では、どうすればよいのか。答えは実に単純であります。それは樹がまだまだ小さい、謂わば「実生苗」と呼ばれるような時期に、しっかり根元に一曲入れてやることなのです。

 そんなに細い苗木に針金をかけて・・・と思われる方もあるでしょうが、細いからこそ柔らかく、柔らかいからこそ安全に曲げることが出来るのです。ある程度成長して大きくなってきた樹となると、こうはいきません。

 いい加減大きくなってしまった樹に無理な負荷をかけた日には、樹皮は裂け最悪の場合、ぽっきりと根元から折れてしまうことでしょう。「小さいから可哀想」という先入観は、この際不要なのであります。

 となると、これは「人間の実生苗」にもそのまま同じことが言えるのではあるまいか・・・。試みに、考察の足を人間界に伸ばしてみようではありませんか。