かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

私と公文式(34) とある子供の転職希望

 ちょっと前に「転生モノ」と呼ばれるアニメのジャンルが流行りましたが、今はどうなのかしらん。例えば先の世で勇者だった人が、生まれ変わってやたらと強い平民になる・・・みたいなイフが夢想されるのは、アニメに限らず人間のサガなのやも知れません。

 転生とまでは行かなくても、子供の頃はよく「違う武器」を使ってみたい衝動に駆られたものでした。それこそ使い慣れたものを捨てて、全く新しい武器やキャラクターの使い手になってゲームを攻略するみたいに、今と違う習い事をするイフをことある毎に夢想したものでありました。

 例えば幼少のみぎりより始めたピアノ。練習をサボって、大変になる度に「お母さん、ぼくヴァイオリンをやってみたいなぁ」と、あさっての方向へと遁走したて堪らない衝動に駆られたものでした。

 もしかしたらヴァイオリンに鞍替えした自分は、これまでにない something を発揮できるのではないか、とかヴァイオリンを弾いている自分はきっと格好がイイはずだ、とか。とにかく隣の芝生はピカピカ光って見えるもの。

 これと全く同様に、私はかつて「そろばん」に憧れたこともありました。公文の算数が難所にさしかかる度に、そろばんをやっている同級生が「何級を取ったのどうの」と言い交わす姿が、実にキラキラと補正がかかって見えたものでした。

 とは言え、そんな「そろばん」への鞍替えが許されるはずもなく「早く公文やれ。」で終わるというのが常。もし当時の私の前に、ヴァイオリンとそろばんをやっている同級生が現れたら、きっと畏敬の念をもって見やったことでしょう。

 「やんだ」「もう辞める」を連呼しつつも、ピアノと公文と付き合い続けて三十余年。ショパンやバッハという友達も出来たし、一つの真理も発見するに至りました。

 曰く、『そろばんで方程式は解けない。』