かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

蝸牛随筆(14) チャイルドシート綺譚Ⅳ

 「これはエッグ・クッションというやつですね」「まぁ、ご存知なんですね!」

 店員の説明を拝聴しつつ、覚え立ての横文字を言ってみたところ、思いがけなく誉められた照れ隠しに「ええ、まぁ」なんて間の抜けた返事をしながら頭を掻いている。

 それもそのはず、既に型録及びチャイルドシート売り場を一度丹念に見て回ったのであるから、そのくらいの小手先の知識の一つや二つは漸く頭に入ってきた。あとは現物をよく観察して「エッグ・クッション」がどれほどの代物であるのか、「新生児対応型」と「義務化年齢全対応型」との商品比較、そして例の「ISO」某が簡便さを如何に左右するものであるかについて検討を加えていく必要がある。

 私たちの隣で同じくチャイルドシートを検討しに来た夫妻の話が聞こえてきたのだが、彼らは何とわざわざ隣県からまかりこしたらしい。これもやはり私と同様に「現物を見なければ分からぬ」、という強い思いの表れなのであろう。何せ、我が子に贈るものであるからして、これをネットのレビューだけを頼りとして決定してしまうのは、返す返すも味気のない話である。

 心強い味方を得たような気がして、早速売り場にあった新生児サイズの人形を連れてきて、次から次とチャイルドシートに乗せてみる。ベルトが引き出し難いものもあれば、シートがリクライニングしてすんなりと定位置に赤子をセット出来るものもある。首の安定がよく担保されるものもあれば、少々心許ないものもある。

 中でも面白かったのは、赤ん坊の涎が染みるだろう肩周りのベルトのアタッチメントが外れるようになっていて、これを洗濯して清潔に保つことが出来るという機能であった。微に入り細に入り、ここまで赤子のあれこれを塩梅しておれば、なるほど機能だってマシマシになるし、それにかかる開発経費も嵩んでくるに違いない。「金額=性能=幸福」という等式は、あながち間違いではないらしい・・・。

 さはれ、じゃあこれもこれもと我が子のために機能をマシマシにしていては、結局の所私は最新モデルの八万云千円の商品を買うことになりかねない。ここへ来て私はやっと、「我が子のため」というキーワードの恐るべき魔力に気がついたのであった。