消防車がやってきた。消防車から消防隊員が降りてきて「こんにちわー。」、なんと教室の中まで入ってきた。
日頃からお客さんには慣れっこになっている彼らであるが、今回ばかりは中々どうして刺激が強いのではないかしらん。
まず反応を示したのが、後列の少年二人である。一人は振り返ってガン見、一人はお目々をぱちくりさせながら鉛筆の先が虚空を彷徨っている。その顔には「ちょっと、なんか消防隊の人、来たんですけど。」と書いてある。
公文本部の局員であるとか、見学のお父さんやお母さんが来る際には、寧ろ「おれの学習を見てくれろ」とばかりに張り切るのだが、憧れのファイヤーマンが相手であるとキンチョーしてしまうものらしい。
次に異変を察知したのが前列の女の子。外に停車したポンプ車と、入ってきた消防隊の姿を認めるや何を思ったか、つかつか先生達の机までやってきた。
「先生、火事ですか?」と尋ねる、このうえなく心配そうな表情・・・ではなくて、業務内容を確認するOLみたいな真顔である。「いやいや、ただの点検だから大丈夫だよ」と説明された様子であるけれど、管理人のおじさんとカーテンを点検してまわる消防隊員を二度見三度見しながら席に戻ると、何事もなかったかのように学習を再開した模様である。
流石に大きい子達は、一瞥した後「ああ、点検かなにかだな」という顔をして微動だにしない。それは、ここぞとばかりに子供のリアクションを観察してはニヤニヤしているオトナと好対照をなしている。
学齢期のど真ん中で、コロナの煽りを食った子供達である。そりゃあ、ちょっとやそっとのことでは動じない筈である。何なら私の方が事ある毎にギャアギャアと、めまぐるしい世の変化に弱いのではあるまいか。