かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

絵本の時間(1) 『おべんとうバス』

お題「大好きな絵本は何ですか?」

 子供のために絵本を買ったのは、これがはじめて。自分で読んだり、コレクションのために集めることはあっても、誰かのために絵本を買うというのは、今までやったことがあるようでやったことのない新鮮な経験でありました。

 さて、この『おべんとうバス』(作・絵 真珠まりこ)という絵本作品、「おべんとう」と銘うつだけあって、各ページの彩りが実に鮮やかです。幼児はこうした原色系の色を認識しやすいそうですが、いまだ乳飲み子である我が息子も、真っ赤なバスに目が釘付けにされた一人でした。

 「バスに のってください」との号令に端を発して、そこに参集しはじめる「おべんとう」のオールスター達。点呼に応じる「はい」「はーい」の声は、読んで聞かせている都合上、父親が目を白黒させながら赤や黄な声を絞り出さなくてはなりません。

 一つ、おかずが乗り込む度に見開き左ページ、停車したバスの窓に顔が並び、少しずつ埋まっていくのも心憎い演出であります。これはもう少し月齢が上がれば、「あ、たまごやきもいるよ」「ハンバーグは、ここに乗ってる」なんて気づきのタネになるのでありましょう。

 幼児向け絵本といっても、読んで聞かせる側からすれば、最低限お話しの体をなしていてくれるとありがたいものです。色だとか、形だとかに特化した幼児向け絵本もある中で、やはり「おべんとうバス」はそうした要所をきっちりおさえつつ、なおかつ物語性をきっちり担保しているのです。

 そんな、食べに行くのか、はたまた食べられに行くのか分からない「しゅっぱーつ」をしていく、という意外にも深い物語が「さて、また読んであげようかしら」という気にさせるのやも知れません。

 さて今夜も二度三度と、真っ赤なバスに彼らを呼び込むことになりそうです。

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