かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

文房清玩(5) ノート Ⅲ


 「○○のノート」と定めて使い始めたはよいものの、それを定めてしまったが故に寧ろ使いづらくなってしまった経験を持っているのは私だけであろうか。ふと書き留めたいことが起こった時に、不幸なことに手持ちのノートが別の用途のそれであって、泣く泣くその裏面にそれを書き留めようと決意した時既に遅し、ハテ何を書こうと思ったのだっけ、となってしまうようでは道具を上手く使いこなしているとは言えない。

 そんな退っ引きならない要請も手伝って登場したのが、わが雑記帳として愛用するルーズリーフである。

○ルーズリーフ(A5版)と「LIFE R300」

 この雑記帳もちょっと前までは、学生時分の流れで「Campus」をはじめとする大学ノートであったが、あれこれのネタや備忘録が多岐にわたってしまった結果、それがちょっとした混沌の様相を呈してきたため、ルーズリーフ型に改めた。少々嵩張りはするもののA5版であれば、たいていの書類カバンにすんなりと収まる。

 また、ルーズリーフ型の利点は分類が容易であるところと、用途に合わせて好みの用紙を選べる点にある。私は「LIFE」という銘柄の中性紙を好んで使用しているが、ソフトクリームのミックスよろしく、「方眼罫」と「無罫」をハーフで綴じ込んでそのイイトコドリを愉しんでいる次第である。

 そんなカスタマイズをしてちょっと悦に入りつつ、いつでも、どんなジャンルでも、思いついたなりに、書きたいなりに書き込めるのはルーズリーフの大きな強みであり、普通のノートでは叶わない、「足りなければ紙を足す」という当たり前のような合理的精神が嬉しい。

 生来、私はどうしてもノートを最初のページから一枚一枚埋めていきたい性分であるため、あることを書き続けている状態で、また別の内容をノートに書く必要が生じた場合、後者の内容を書くためにはあと何ページぐらい前者の内容に必要であるかの見当をつけねばならず、それがいざという時の制約にならないとも限らない。

 そんな時に限って前者が盛り上がるわけで、進むページ数がヘンなプレッシャーになってくる。もう紙面に余裕がないことを気にしながら書くというのは、どうにも不都合な制約であり、そもそもの書く気分を大いに腐らせることテキメンである。やはりノートは書く気分を醸成するものであってほしいではないか。

 それがルーズリーフであれば、いくらでも後を延ばすことができて要らぬ心配をしなくてよい。そんなことならば、ノートパソコンでも持ち歩けという話であるが、私はそんなザマザマしいものをカバンに入れてごそごそ出し入れするのを好まない。早撃ちのガンマンではないが、サッと取り出して直ぐに記す(時にそれは図式だったりもする)点にかけては、まだまだアナログノートに百日の長があるように思う。