かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

教育雑記帳(51) ベンキョウとブカツ Ⅰ


 春休みのグラウンドで、若人がパカスカとボールを打ち、何やら特殊なかけ声を発しながらランニングに勤しんでいます。なるほど春休みは、こうしたブカツに励む人々にとって、冬の間ままならなかったトレーニングの遅れを取り戻す絶好の機会なのでありましょう。

 そんな溌剌たる姿を目の当たりにしているにも拘わらず、私は何とも複雑な思いに苛まれているのです。果たしてこの中のどれくらいの生徒が、「ベンキョウとブカツの両立」という神話を信じていることか、と。

 勉強と部活動の両立が可能であるのは、ほんの一握りの学生であります。テレビやネットの広告では頻りにこれらの両立を謳う学習塾の宣伝文句が飛び交っていますが、ブカツをしながらテストで点が取れること=「両立」と思い込むこと自体がとんでもない誤謬に満ちているのです。

 学生の本分は勉学であります。これはどれだけ世の中が変化しても、変わってはいけない真理であると私は信じています。学校教育の中で身につけるべき最低限の「読み・書き・そろばん」の能力とは即ち、氾濫する情報に惑わされることなく論理的に思考し、思慮深い選択と行動をしていくための能力であり、ブカツより何より優先されるべき第一目標と考えるのはオカシイことでありましょうか。

 学生は何のために学校へ通うのか。ブカツをするために学校に通うのでしょうか。そんなわけがありません。もちろん学校生活や部活動を通して社会性を身につけることもまた、重要な勉強と言えましょう。しかしながら勉強と同じボリュームで部活動が並び立つという状況は、部活動が勉強を疎かにしても構わないという歪んだ認識の温床にこそなれ、学生を勉学に邁進させる環境作りに何ら資するところがないのです。