かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

育児漫遊録(9) 沐浴エレジー Ⅱ 


 こんな時にスマートフォンでユーチューブが視聴出来るのは有り難い。一昔前ならばここでパソコンを立ち上げ、有線のインターネット回線に接続して後に、ようやくカクカクした動画を視聴出来たものであるが、まめまめしき情報ならば即座に手に取れるのが現代である。

 もちろん紙媒体の育児手引き書も本屋で購入して持っているが、その本に掲載された要所要所の写真と活字を追いまくって、その場面間に横たわる空白の時間を想像力によって補っていく作業には多大な時間と労力を要する。文学作品であればそれが作品を味読する醍醐味ともなろうが、実用書を相手にそんなイメージの作業をしているヒマがあったら、ネット上で公開されている「沐浴指導」動画を拝見した方がよっぽど経済である。

 さりながら、検索をかけてみて驚いた次第であるが、よくもまぁこんなに沢山、様々なハンドルネームの人々が「沐浴指導」に関する動画を制作しているものである。私は今まで生きてきて一ミリたりとも「そうだ、沐浴動画を作ってそれをネットで放映しよう!」などと思い立ったことがないのに、これまでおよそ無縁たりえた人々の凝らした意匠の数々が目白押しに並んでいる様を眺めるのは、かえすがえすも不思議な心地がする。

 ここであれこれ品定めをする余裕もないので、まずは手近なところの一本を視聴する。端的に申せば、たいへんに分かりやすかった。現役の助産師が講師とあって、彼女の腕の中に抱かれた新生児はキューピー人形よろしく自在にその体勢を替えられながら丸洗いされていた。

 顔、頭、首、腹、腕、足、そしてひっくり返して背中を流す。それがあまりに簡明に見えるので、「なんだ、これなら私でも出来るのじゃあないか」と思う素人の浅薄さよ。この後、私は文字通りの修羅場を踏むところとなるのであった。