かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

文房清玩(7) 定規 Ⅱ


●大きな三角定規

 私は国語の教員をやっていたことがあるけれど、実際にこれを使ったことがある。子供の時分から学校の先生が使っているのを見て、一度はいじくってみたいと思っていたのが、ひょんなことからようやく使う機会を得たのである。

 三角定規片手に、ニヤニヤしながら教室に入っていくと生徒達が「なんでだよ」と予定通りのツッコミを入れるのが心地よい。何なら私の得意な関数でもレクチャーした方がよっぽど彼らにとって良かったのやもしれないが、本日のテーマは学校文法として定着して久しい「橋本文法」。

 活用表を書くにあたって、背丈がちょいとばかし足りない私は、有無を言わさず巨大三角定規の使用を即決したわけであるが、いざ使ってみるとこれがなかなかどうして一筋縄でいかない。ベタン! と黒板にひっついたなり、ちょっとやそっとの力では離れない。こんな磁石がなくても事は足りるのだが、裏返して使おうとしても盾のそれみたいな持ち手が付いている。

 やはり定規はあてがってから線を引くまでの微調整が利いてくれるのがよい。活用表を拵えるのに時間ばかりかかってならないので、結局のところフリーハンドと気合いで「こきくくるくれこい!」なんて彼らにとって呪文めいた言葉を書き殴っていた思い出がある。