かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

育児漫遊録(12) 授乳夜話 Ⅰ


 陽水の「リバーサイドホテル」に「夜の長さを何度も味わえる」というのがあったかと思う。果たしてそれは「ベットの中で魚になったあと、川に浮かんだプールで一泳ぎ」する二人の甘美な世界を詠うものなのだろうが、ふと私がこの一節を想起したのは激しい眠気に襲われつつ我が子に哺乳瓶をあてがっていた折りであった。

 これほどまでに夜は明けないものであったか。平安の貴族達は明けない夜を泣いて悦ぶのだろうが、生活リズムの大変動に晒されている人間は明けない夜に四苦八苦せねばならない。夜の寝覚めに心やすく読書に耽っていたころが、この上なく幸せなものに思えるほど「二時間に一回」たたき起こされる日々はシンドイ。

 我が子が病院から退院してきて、はじめて私が湯に浸からせたその晩から、当たり前のことではあるけれど二時間に一回の夜の世話がはじまった。いくら妻と交代して世話に中るといえども、眠りの浅い私は自分の番でなくても、妻より先に目が覚めてしまい、結局のところうつらうつらとしているうちに次の私の番が来てしまう。

 何せ「四〇ミリ」しか飲めないわけだから、すぐに腹が減ってしまうのに加えて、ゲップと一緒に折角腹に入れたミルクを吐き戻してしまうこともしばしば。するとまた一時間も経たないあたりでふにゃふにゃと泣き出して、彼のお付きの二人がやおらベットから起き出すところとなる。夜はかくして長く、飴のようにのびていく。
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