かたつむり学舎のぶろぐ

本業か趣味か、いづれもござれ。教育、盆栽、文学、時々「私塾かたつむり学舎」のご紹介。

蝸牛随筆(43) 盆支度 Ⅱ


 盆棚を吊りながらあれこれ片付けていると、仏壇の抽斗から線香の在庫が大量に出てくる。

 線香を発見しかねた祖母が母に、無いから買ってきてくれろと頼んだのだろうが、母は母の所定の位置にしまうものであるから再び発見が遅れ・・・の無限ループが発生したのであろう。今年の作業の収穫はまさにそれで、向こう半年、春の彼岸辺りまでは線香を買わなくてもいいようだ。

 果たしてわが家の盆支度は、地域性もあるのだろうが地元の知人宅においても見かけないレイアウトがある。昔からこれがスタンダードと思い込んでいたものであるから、変わること無くそれを踏襲している次第であるが、折角の機会であるから宮城県は大崎加美地域における民俗的資料の一報告として公共の場所に紹介しておこうと思う。

 まずは吊るし物。わが家ではナスやキュウリの牛馬を作らないが、仏壇の上に棒を渡してそこに生の素麺を垂らしたりトマトやら獅子唐、ほおずき等、兎角吊しやすい夏野菜を吊り下げる。傍目にはちょっとしたクリスマスのカラーであるが、おそらくこれは飢えに対する施しであり、施餓鬼供養の意味合いと想像される。

 上から吊り下げたら、今度は下の準備にも取りかからねばならない。「菰」を仏壇に敷いて、その上にお供え物をする風習がこの辺りでは一般的であるらしいが、それがどういうわけか、わが家では仏壇からべろりと下へと垂らすのである。

 本当は横にして使う物であるからして、縦に垂らすとなるとこれをバキバキと途中から折らねばならぬ。その下端は床に接地するのがよしとされていて、曰く「帰ってきたご先祖様の霊が、下からこの菰を伝って仏壇へとよじ登れるように」という配慮から、とのことである。